亡くなった方が交通事故などの加害者で、損害賠償金の支払いが必要な場合、相続人はその責任も承継することとなるため、賠償金の金額分については相続税の債務控除の対象となります。また逆に、被害者として死亡した場合の死亡賠償金については非課税となります。損害賠償金が関係する場合の相続税の取り扱いについて解説いたします。
~目次~
1.加害者が死亡した場合の損害賠償金は相続税の債務控除対象
>>無料会員に入会すると、実務で使えるオリジナル書式をプレゼント!!相続財産の中に本来被相続人が支払うべき債務がある場合には、相続人がその債務を承継し支払うこととなりますので、相続税評価額からその相当分を差し引くことができます。これを債務控除といいます。
被相続人が事故等の加害者となり、かつ死亡した場合、相続人は民法896条の規定により被相続人の損害賠償の責任についても承継することとなり、損害賠償の支払い義務が生じます。この場合、損害賠償金については、相続財産から債務控除することができます。また、過去の事故において被相続人が支払いを終えていない損害賠償金についても同様に債務控除の対象です。債務控除となる対象は、被害者に対する損害賠償金のほか、通例の範囲の金額であれば支払った見舞金なども含まれます。
ただし、相続においては、財産を放棄すると同時に債務も放棄することが可能です。これは事故等の損害賠償金についても例外ではありません。
2.被害者が受け取る損害賠償金の相続税
2-1.損害賠償金は基本的に非課税扱い
交通事故等で被害者が死亡した場合に遺族に支払われる損害賠償金については、相続税は非課税です。損害賠償金は受け取った遺族の所得となりますが、所得税法の考え方では、損害賠償金は課税の対象とはしていません。損害賠償金は、心身に受けた損害に対する慰謝料という性格もあるからです。しかし、損害賠償金の内容によっては、相続税が発生する例もあります。例えば、以下のようなケースです。
2-2.例外:事業用資産に対する損害賠償金
損害賠償の目的が、事業用資産の損害に対する補償である場合には、通常の損害賠償金の扱いとは異なり、その原因によっては被害者(被相続人)の事業収入に算入しなければならないこともあります。例として、棚卸資産に対する賠償金などが挙げられます。
2-3.例外:すでに受け取りが確定していた未収の損害賠償金
相続では、相続が発生した時点で被相続人が受け取ることが確定していた財産に関しても相続することができますが、その内容により相続税の対象となる場合があります。
損害賠償金においては、被相続人が過去に被害にあったほかの事故による損害賠償金を受け取っていて、亡くなった時にその受け取りが済んでいない未収のものがある場合です。相続人はその損害賠償金を受け取ることができますが、その金額については相続税の課税対象となります。