非上場株式の自社株の相続税評価で、純資産価額方式を採用する際には、相続開始前3年以内に取得した土地建物の扱いは不利になります。自社株の評価に関わる相続開始前3年以内に取得した不動産の評価について、貸付地や貸家建付地の場合を含めて解説していきます。
~目次~
1.相続開始前3年以内に取得した土地建物は純資産価額方式で時価評価されてしまう
>>無料会員に入会すると、実務で使えるオリジナル書式をプレゼント!!1-1.純資産価額方式での土地や建物の評価方法とは
取引相場のない非上場企業の自社株の相続税評価において、純資産価額方式が用いられます。純資産価額方式は、「1株当たりの純資産価額=(相続税評価額によって算出した総資産価額-相続税評価額によって算出した負債の額-評価差額に対する法人税額等の相当金額)÷発行済み株式数」という計算式で評価額を計算するものです。
ただし、土地や建物のうち、相続開始3年以内に取得したものについては、相続税評価額ではなく、実際の取引価格である時価での評価となります。ただし、土地の取引価格の算定が難しい場合には、取得価額に地価変動率を掛けた価格を取引価格相当額として扱うことができます。
相続税評価額は、通常、土地は路線価などをもとに時価の7~8割程度、建物は固定資産税評価額をもとに、建築費の6~7割程度になるため、時価での評価は不利です。
1-2.相続開始前3年以内に取得した土地を貸している場合には?
相続開始前3年以内に取得した土地や建物を貸している場合は、貸宅地、あるいは、貸家建付地、貸家としての評価を適用することはできます。
「貸家建付地の評価額=自用地価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)」、「貸宅地の評価額=自用地価額×(1-借地権割合)」、「貸家の評価額=建物の評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)」という計算式は変わりません。ただし、相続税評価額が時価での計算となる点では不利です。
2.法人で不動産を購入して節税する場合には注意
現金や株式などの有価証券で保有しているよりも、不動産で保有した方が相続税評価額を抑えられるため、土地や建物の所有は節税になります。しかし、相続開始3年以内に取得した不動産に関しては、非上場株式の純資産価額方式での株価の計算では、時価で算出となるため、節税効果が得られなくなってしまうのです。貸している場合も、貸宅地や貸家建付地としての軽減は受けられるものの、自用地は時価で評価されるため、節税効果が薄れます。
一方、個人での所有の場合は、相続開始前3年以内に取得した土地や建物であっても、相続税評価額で相続税が算出されます。節税対策で不動産を購入する場合は、タイミングによっては、法人と個人のいずれの所有とする方が有利か、慎重な判断が必要です。