贈与を行う場合、将来のトラブルを避けるために書面を作成するというのが一般的かと考えられます。しかし、必ずしも書面によって契約を行う必要はなく、贈与では書面によらないものも認められています。書面によらない贈与の考え方と、法的な解釈を見ていきましょう。
1.書面によらない贈与とは?
>>無料会員に入会すると、実務で使えるオリジナル書式をプレゼント!!贈与とは基本的に、贈与をする側、贈与をされる側が生きているうちに、無償で財産の受け渡しがあることです。贈与では、給与所得などのように労働の対価として金銭などの利益がある訳ではありませんが、ものをもらうことによって贈与された側は利益を得たと考えることができます。一定以上の贈与では、所得税を加算しない代わりに、贈与税として受けた利益に対して税を課しているのです。ただし、贈与の中でも「死んだら家を譲る」というように死因贈与があった場合は、税金の計算においては、贈与税ではなく、相続税の枠組みとなります。
さて、話は贈与に戻りますが、贈与する側、贈与される側で、金品の受け渡しを行う場合は、書面を作成することも少なくないかと思います。書面を作成するのは、後々のトラブルを回避するために有効です。
しかしながら、家族間や友人間など、親しい間柄だからという理由などで、場合によっては書面を交わさずに贈与を行うというケースもあるでしょう。「書面によらない贈与」とは、贈与時に書面を交わさないことです。法的には、書面を交わさない場合、つまり口頭で約束した場合などでも、金品の受け渡しがあったという贈与の事実があれば、贈与として有効となります。
2.書面によらない贈与は撤回することができる
書面で契約を行わなかった場合でも、「書面によらない贈与」として贈与に値するということを解説しましたが、やはり書面を交わした場合の贈与よりも法的な拘束が緩くなってしまうというのも事実です。
書面によらない贈与の場合は、贈与の約束をしていても、贈与が実際に行われていなければ贈与を撤回することができます。民法第550条において、贈与の履行が終わっていない限り、当事者である贈与する側と、贈与される側は、いつでも贈与の撤回が可能だと定められているためです。このように贈与の事実撤回の敷居が低くなっているのは、書面を交わさなかったことによって起こるトラブルを極力少なくすることが理由に挙げられます。
ただし、注意したいのが、贈与が実際に行われたのかという点が撤回における焦点になることです。実際に、贈与の撤回が有効かどうか裁判にまで発展したケースもあります。基本的には受け渡した時点で贈与が履行されたと考えられますが、当事者間で受け渡しが終わった後でも、農地の贈与で知事の許可がまだ下りていなかったということから撤回が認められたケースもあります。贈与の履行の焦点は、当事者間の受け渡しの事実だけに限らないという点にも十分注意する必要があるでしょう。