税務署が相続発生の事実を知っている理由は相続税法58条にあり

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税務署が相続発生の事実を知っている理由は相続税法58条にあり

所轄税務署が、特定の人が亡くなったことにより、遺産相続が発生する事実を速やかに知りえている背景には、明確な法的根拠があります。具体的に相続税法における該当条文の内容を確認しながら、関連する注意事項についても併せて紹介していきましょう。

1.税務署に相続の情報を知らせる義務を定める相続税法58条

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相続税法の第七章「雑則」において、第58条「法務大臣等の通知」という項目があります。その第1項では、法務大臣は市区町村から死亡に関する届書等の情報の提供を受けたとき、その情報を国税庁長官に通知しなければならないと明記されています。法務大臣から国税庁長官への通知期限は、市区町村から情報提供を受けた日の翌月末です。

なお、相続税法第58条第1項は令和6年4月1日から上記の内容になりましたが、改正前は市区町村長から所轄税務署長に通知することになっていました。改正前の相続税法第58条に基づいて各市区町村から送付される通知書は、税務署の職員等の間で「ゴッパチ」と呼ばれていました。所轄税務署では、「ゴッパチ」を受領してから、署内の調査によって相続人代表者を特定し、その対象者に対して相続税に関する案内文書や申告書を送付する手続きに入っていました。

仮に、自身が相続人代表者であるにもかかわらず、所轄税務署から相続税に関する案内が来ない場合であっても、相続すべき遺産がある場合には相続税の支払い義務が発生します。納付すべき相続税が多額になる可能性に備え、あらかじめ資金繰り等の計画を策定しておくことが大切です。

2.各市区町村から所轄税務署へ固定資産の情報も通知される

各市区町村が死亡届を受領した後、所轄税務署へ提供される情報は、被相続人の死亡の事実だけではありません。通常、各市区町村では、固定資産税の課税および管理を目的として、各住民が所有する土地および建物といった固定資産に関する最新情報が集められています。

したがって、相続の対象となりうる固定資産の内容やそれぞれの固定資産税評価額についても、相続税算定時の参考情報として所轄税務署に通知されるのが一般的です。改正後の相続税法第58条第2項では、市区町村長は固定資産の内容やその固定資産税評価額等を所轄税務署長に通知する義務があると明記されています。

なお、税務署内では、過去の納税に関するデータ等を基に、相続税が発生する可能性が高い人については、普段から独自に情報管理もおこなっています。例えば、過去に親族等から多額の遺産相続を受けた人や、毎年確定申告が必要な高額所得者については、税務署も相続税が発生する可能性が高い人として認識しています。万が一、相続税に関する申告をすべき人が手続きを怠り、期限までに相続税を納めていない場合には、ペナルティとして追徴課税が課されるため注意が必要です。


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