相続対策に興味のある方ならば、借金をして土地や建物を購入すると、相続税の節税になるという話を聞いたことがあると思います。これは、「借金をする」という行為ではなく、「不動産を購入する」という行為に相続税の節税のカラクリがあります。
相続税の評価は、土地については、通常の時価の約80%、建物は建築価格の約60%程度です。つまり、現金で1億円持っていれば、相続税評価額は1億円ですが、1億円の土地を購入すると、1億円×80%=8,000万円、1億円の建物を購入すると、1億円×60%の6,000万円になるのです。これが、不動産を購入するだけで、相続税対策になると言われている理由なのです。以下、建物を購入する事例で見てみましょう。
事例①・・・借金をして建物を購入した場合
○建物・・・購入価格(1億円)固定資産税評価額(6,000万円=1億円×60%)
○建物購入前の総財産 3億円
○建物購入後の総財産 3億円+建物6,000万円-借入金1億円=2億6,000万円
ここで、借入金1億円(債務・マイナス財産)が増え、財産として増えるのは固定資産税評価額で評価した6,000万円のみですので、購入前の総財産3億円-購入後の総財産2億6,000万円の差額の4,000万円の総財産を圧縮する効果があります。仮に、相続税率が40%とすると、4,000万円×40%=1,600万円の相続税が減額できることになります。
事例②・・・手元資金で建物を購入した場合
○建物・・・購入価格(1億円)固定資産税評価額(6,000万円=1億円×60%)
○建物購入前の総財産 3億円
○建物購入後の総財産 3億円+建物6,000万円-建物購入のための資金1億円=2億6,000万円
事例②のように、手元資金で建物を購入した場合であっても、相続財産の圧縮額は4,000万円であり、借金をして購入した場合と比べてもその効果は同じであることが分かります。
つまり、購入した不動産の額が、購入額よりも低い額で評価される点に相続税の節税効果がありますので、その元手となる資金が、借入金か手元資金であるかは、相続税の節税額には、関係ないのです。もちろん借入金には利息が発生しますので、手元資金に余裕がある方は、借入をせずに、自己資金で不動産を購入した方がいいと考えられます。