借入金や未払金がない場合でも、実務上、債務控除となるものはいくつかあります。債務控除の対象となる債務は、「確実な債務」及び「死亡後に確定する被相続人に係る公租公課」です。以下の解説を参考にして下さい。
実務上頻出する債務控除「確実な債務」
債務控除の対象となる債務は「確実な債務」「被相続人に課される所得税等」です。「確実な債務」には、借入金のような明らかな債務の他、相続開始時点でまだ支払が行われていない又は支払期日が到来していない費用も含まれます。
具体的には、次のようなものが挙げられます。
①クレジットカードの未払金
被相続人が使った費用で、決済の済んでいないもの
②医療費や生活費の未払金
被相続人の死亡後に相続人が病院に支払った被相続人にかかった費用
老人ホームや介護施設等使用料その他
③公共料金の未払金
水道・ガス・光熱費、通信費等
④被相続人の公租公課の未払金
固定資産税、住民税、個人事業税の未納分(死亡した年分で支払期日未到来のものを含む)、社会保険料等
⑤賃貸物件の敷金や保証金、家賃の前受金
⑥買掛金、未払金等の事業上の債務
実務上頻出する債務控除「公租公課」
被相続人の死亡後相続人などが納付又は徴収されることになった税金については、被相続人が死亡したときに確定していないものであっても、債務として計上できます。
準確定申告の所得税・消費税・個人事業税の税額がこれにあたります。
但し、これらに係る延滞税、過少申告加算税等の付帯税は、相続人の責めに帰すべきものなので、債務控除の対象とはなりません。