私権の客体の中心となっているのは物、つまり有体物のことです。物というのは、その性質や特徴などによりさまざまな範疇に分類されます。それらの分類の中に、元物と果実という分類がありますが。元物と果実とは一般的な用語ではなく法律用語です。元物は収益物を生み出すもとになるもので、果実は天然果実と法定果実のこと意味し、「物の用法に従い収取する産出物」を天然果実、「物の使用の対価として受けるべき金銭その他の物」を法定果実と民法第88条は規定しています。
天然果実の例としては、畑から収穫される野菜、乳牛からとれる牛乳、鉱山から採掘される鉱物などがあります。法定果実の例としては、賃料や貸し金の利息などがあります。
1.元物と果実の所有者はだれなのか
民法89条によると、天然果実は元物から分離する時に収取する権利がある者、法定果実は元物の所有者となっています。
ここでひとつ疑問がります。民法はなぜ天然果実の所有者を元物の所有者と規定しなかったのかということです。これは具体例で考えてみるとよくわかります。例えば、畑で野菜を栽培している場合、通常なら野菜は畑の所有者のものです。ところが、何らかの事情で畑の所有者以外の人に野菜を収穫する権利があることがあります。民法はこのような場合を想定しているわけです。
2.元物と果実の相続税評価
元物と果実の相続税の評価とは、元物と果実を一体として評価するのか、それとも分離して独立の財物として評価するのかということです。野菜などの天然果実であれば土地と一体で相続税評価ができます。預貯金・貸付金の経過利子などの法定果実は現金になる前の段階では債権としますので、独立した財産として相続税評価します。
3.相続財産からの果実の帰属の問題
相続税評価をする場合に問題となるのが、相続財産から生じた果実が遺産分割の対象となるのかという問題です。相続が開始した後から遺産分割までの間でも相続財産からの果実は生じるため、その帰属について問題となるわけです。よくあるのが不動産の賃料収入などの法定果実についてです。
この点について判例は、相続が開始した後から遺産分割までの間に生じた果実は,相続財産とは別の財産であるとしています。その果実は、共同で相続した者がその相続分に応じて、各人が取得する財産だと判断しています。共同で相続した者が各人で取得した相続財産から生じる果実は、遺産分割によって影響を受けることはないとされています。これは、相続が開始した後から遺産分割までの間に、相続財産から生じた果実は遺産分割の対象とならないことを意味します。
したがって,相続開始後遺産分割までの間に生じた果実は,共同で相続した者がそれぞれの法定相続分に応じて個別に取得することになります。
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