相続される財産の多くは、預貯金や有価証券などのように価格のはっきりしているものではありません。特に日本では不動産を相続する人が多く、不動産が相続財産の大半を占めるといった場合も少なくありません。
そのため、不動産の相続税評価額の算出方法は細かく定められており、詳細な法律が整備されています。
そんな相続財産の代表とも言うべき「土地」の評価方法の基本となるのが、「路線価方式」と「倍率方式」という2つの評価方法なのです。
1.路線価方式
「路線価方式」は比較的簡単なもので、「路線価」が定められている地域について適用されます。
路線価というのは、路線(道路)に面する標準的な宅地の単位価格(1㎡あたりの価格)で、国税庁のサイトに掲載されている財産評価基準や税務署に備え付けられている路線価図を確認することで知ることができます。
相続した土地の形状等に応じて奥行補正率などで補正した面積に、この路線価を掛け合わせることで、評価額を算出することができます。
なお、「補正率」については、国税庁のサイトに掲載されている「奥行価格補正率表」を参照してください。
2.倍率方式
倍率方式は、路線価が設定されていない地域(主に市街地ではない地域)で、土地の評価を行うときに適用されます。
倍率方式での土地の評価額算出方法は、その土地の「固定資産税評価額」に、「一定の倍率」を掛けて算出します(路線価方式のような補正率などはありません)。
このときの「一定の倍率」も国税庁の定めているもので、路線価表と同じく国税庁のサイトに掲載されている評価倍率表を確認することで分かります。
(1)固定資産税評価額
固定資産税評価額というのは、固定資産税を計算するための基本となる金額で、公示価格の70%を基準として決められています。
実際には、総務大臣が定める固定資産評価基準に従って評価された価額を各自治体(知事や市町村長)が決定して、固定資産課税台帳に登録した金額です。
なお、固定資産税はできる限り「時価」で評価することが「税の公平性」につながることから、この金額は3年に1度見直されます(直近では平成27年に見直されています)。
固定資産税評価額については、上述の通り各自治体の固定資産台帳に登録されています。自治体窓口や管轄税務署に問い合わせることで「評価証明書」を発行してもらうことができますので、そこから確認しましょう。
なお、固定資産税の納付書にもそれらしい記載がされていますが、この金額は固定資産税の課税標準額で、固定資産税評価額とは違うものです。気を付けましょう。
(2)評価倍率表
路線価の定められていない地域での評価額を算出するために、国税局長の定めた倍率です。
価格帯の類似する地域ごとに、その地域にある宅地の売買実例価額や公示価格、不動産鑑定士などの有識者による鑑定評価額、精通者意見価格等をもとに定められているものです。
路線価と同様に、国税庁のサイト(財産評価基準)や各税務署で確認することができます。