文化財保護法が指定する重要文化財、登録有形文化財、伝統的建造物に該当する建築物を相続によって取得した場合には、その相続税評価が必要になります。では、その方法はいったいどのようなものなのでしょうか。以下で解説します。
文化財建造物である構造物の相続税評価について
文化財建造物である構築物の相続税評価の方法は、財産評価基本通達第4章(97-2)において規定されています。
それによると、文化財建造物である構築物の相続税評価額は、一般の構築物の相続税評価額に、財産評価基本通達第2章第2節(28-4)「文化財建造物である家屋の敷地の用に供されている宅地の評価」で定める割合を乗じて計算した金額を控除した金額によって評価します。
なお、「文化財建造物である家屋の敷地の用に供されている宅地の評価」で定める割は以下のとおりです。
(1)重要文化財 0.7
(2)登録有形文化財 0.3
(3)伝統的建造物 0.3
例えば、文化財建造物が文化財建造物でないとした場合の相続税評価額が1,000万円とした場合、当該建造物が重要文化財である場合には1,000万円-1,000万円×0.7=300万円、
登録有形文化財である場合には、1,000万円-1,000万円×0.3=700万円、伝統的建造物とした場合には、1,000万円-1,000万円×0.3=700万円となります。
一般的な構築物の評価額について
文化財建造物に該当しない、一般的な構築物の相続税評価の方法は、その構築物の再建築価額から、建築時から課税時期までの期間(1年未満の端数は1年に切り上げ)の減価償却費の合計額等を控除した価額の70%として定められます。
なお、この場合の償却方法は定率法を用い、また、耐用年数は国税庁が規定している耐用年数省令で規定している耐用年数を用います。
重要文化財、登録有形文化財、伝統建造物とは
有形文化財とは、建造物、工芸品、書跡、典籍、古文書、考古資料、歴史資料などの有形の文化的所産で、芸術上学術上の価値の高い者のことを言います。1950年に制定された
文化財保護法によって規定されます。
重要文化財とは、上記の有形文化財のうち、重要として文部科学大臣が指定したものをいいます。
ちなみに、重要文化財のうち、特に文化史的価値の高いものとして指定されたものを「国宝」といいます。
一方、1996年に設けられた文化財登録制度に基づいて、国宝や重要文化財など国や自治体が指定する文化財とは別に、所有者自らが指定することで登録された文化財を「登録指定文化財」といいます。
最後の、伝統的建造物とは、文化財保護法上の文化財の1つで、周囲の環境と一体をなして歴史的風致を形成する伝統的な建造物で価値の高いものをいいます。