補償金が少額な特許権の相続税評価

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財産評価基本通達では、特許権の評価方法について定めています。その中には、被相続人が亡くなった日以降に受け取る予定の補償金が少額である場合についての規定もあります。ここでは、補償金が少額な特許権の相続税法上の評価方法について説明します。

1.特許権の評価方法

特許とは、産業上利用ができる有益な発明をした者の権利を保護する制度です。特許権者(特許を取得した者)には、発明を他人に使用させて補償金を受け取ったり、その発明を優先的に使用したりする権利が与えられます。特許権には存続期間があり、出願の日から20年と定められています。一部の例外を除いて延長はできません。存続期間内であれば特許権は相続することができ、相続税法上の相続財産に加えられます。

特許権の相続税法上の評価方法は、財産評価基本通達で定められています。特許を自ら実施している場合は、特許権は営業権に含めて評価します。特許を他人に実施させている場合は、特許権は、その特許が存続する期間内の各年に受け取る金額を複利計算で現在の価値に割り引き、それらを合計した金額で評価します。特許権の存続期間は出願から20年であるため、出願から課税時期までの期間によって変わるものの、補償金を受けられる期間は20年より短い期間となります。

2.将来受ける補償金が少額である場合

課税時期から特許の存続期間内に受け取る見込みの補償金の額が少額である場合について、財産評価基本通達144に規定があります。

将来受ける補償金が50万円に満たない特許権は、相続税法上は評価しないこととされています。先に述べたように、特許権の価額は将来受ける予定の補償金の見積額をもとに評価しています。将来の不確実性を考慮すると、一定の金額に満たないものについては一律に評価しないこととしたほうが、評価の上では安全であるという考えを背景に、このような規定が定められています。

【例】被相続人の死亡によって、被相続人が持っていた特許権を相続人のうちの1人が相続した場合、将来受ける補償金の額に応じて、特許権の評価は次のようになります。

・ 将来受ける補償金の合計が50万円に満たない場合
この特許権は相続財産として評価しません。
・ 将来受ける補償金の合計が50万円以上である場合
この特許権は相続税における財産評価の対象となります。特許権が存続する期間内の各年に受け取る金額を複利計算で現在の価値に割り引き、それらを合計した金額が特許権の評価額となります。

【財産評価基本通達】
(補償金が少額な特許権)
144 課税時期後において取得すると見込まれる補償金の額の合計額が50万円に満たないと認められる特許権については、評価しない。


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