特許権はその存続期間内であれば相続でき、相続税の課税対象になります。財産評価基本通達では、特許権の評価について具体的な方法を定めています。ここでは、権利者が自ら特許発明を実施している場合の特許権及び実施権の評価方法について説明します。
1.特許権とその実施権
特許権は、特許を受けた発明を独占的に実施できる権利をいいます。特許を受けた発明の実施とは、特許を受けた発明を使って事業を行うことをいいます。具体的には、発明された技術を使った製品の製造、販売、使用などが挙げられます。
特許権者(特許権を持っている人)は、他人に対して特許発明を実施させる実施権を設定することができます。特許の実施権には、「通常実施権」と「専用実施権」があります。通常実施権は、特許発明を業として実施する権利をいいます。特許権や専用実施権のように権利を専有するわけではないので、複数の人に通常実施権が与えられることもあります。専用実施権は、特許権と同じように特許発明を業として実施する権利を専有します。つまり、他者だけでなく特許権者を排他することができる強い権利です。
2.自ら特許発明を実施している場合の評価方法
特許権者や通常実施権者、専用実施権者が自ら特許発明を実施している場合の、特許権・実施権の価額は、その実施をしている者の営業権の価額に含めて評価します。特許権者や実施権者は、業として特許発明を実施する権利を持っており、何らかの事業を行っていることが前提となるからです。営業権の価額はその事業の超過収益をもとに算定しますが、超過収益の中には特許発明の実施による収益も含まれていると考えられます。
3.営業権の評価方法
参考までに、営業権の評価方法をご紹介します。営業権の価額は、次の算式によって計算した金額で評価します。
営業権の価額=超過利益金額×営業権の持続年数(原則10年)に応ずる基準年利率による複利年金現価率
超過利益金額=平均利益金額×0.5-標準企業者報酬額-総資産価額×0.05
平均利益金額は過去3年間の平均所得とし、将来の不確実性を見込んで0.5倍します。標準企業者報酬額は、財産評価基本通達166に規定された算式で計算します。純資産価額の0.05倍の額を差し引くのは、資産の運用利回りによる利益を除くためです。これらの金額から求めた超過利益金額から複利の金利にあたる額を割り引いた額が営業権の価額となります。
なお、医師、弁護士等のようにその者の技術、手腕または才能等を主とする事業に係る営業権はその者の死亡によって消滅するため、相続税法上は評価しません。
【財産評価基本通達】
(権利者が自ら特許発明を実施している場合の特許権及び実施権の評価)
145 特許権又はその実施権の取得者が自らその特許発明を実施している場合におけるその特許権又はその実施権の価額は、その者の営業権の価額に含めて評価する。