財産評価基本通達では、あらゆる財産の相続や贈与に対応できるように、さまざまな種類の財産の評価方法を定めています。一般家庭の相続で鉱業権や租鉱権の評価が必要になることはまずありませんが、事業承継の場合には必要となることがあります。そのため、財産評価基本通達では、鉱業権や租鉱権について評価単位から具体的な評価方法まで定めています。
1.鉱業権及び租鉱権とは
鉱業権とは、登録を受けた一定の土地の区域(鉱区)において、登録を受けた鉱物及びこれと同種の鉱床中にある他の鉱物を掘採し取得する権利をいいます。租鉱権とは、契約に基づき、他人の鉱区において鉱業権の目的となっている鉱物を掘採し取得する権利をいいます。
鉱業権や租鉱権については、鉱業法に定めがあります。鉱業法が適用される鉱物として、金属鉱物が22種類(金、銀、銅など)、非金属鉱物が14種類(黒鉛、硫黄、石こうなど)、燃料鉱物が5種類(石炭、亜炭、石油など)の、あわせて41種類が指定されています。
2.鉱業権及び租鉱権の評価単位
財産評価基本通達では、鉱業権と租鉱権は、権利そのものを単独で評価するのではなく、鉱業のための財産も含めて、鉱業全体の価値で評価するという考え方が採られています。
したがって、相続税評価の上では、鉱業権または租鉱権の価額には、鉱業のために使う建物、構築物、機械装置や採掘された鉱物なども含まれます。鉱業権・租鉱権とその他鉱業のために使う財産を別々に評価することはありません。
評価の単位は鉱山ごととされており、複数の鉱山で鉱業を営んでいる場合は、それぞれの鉱山ごとに評価します。
3.鉱業権及び租鉱権の評価区分
鉱業権及び租鉱権の評価は、鉱山の操業の状態に応じて次のとおり区分し、それぞれ定められた方法で評価することとされています。
・ 現に操業をしている鉱山の鉱業権(租鉱権)
・ 休業しているものの、近いうちに所得を得ることが見込める鉱山の鉱業権(租鉱権)
・ 上記2項の場合において、所定の計算方法で求めた評価額が、その鉱山の資産の総額を下回る場合の特例
・ 休業していて、近いうちに所得を得られる見込みがない鉱山の鉱業権(租鉱権)
・ 探鉱中である鉱山の鉱業権
操業している鉱山または休業しているものの近いうちに操業が見込まれる鉱山については、今後その鉱山から得られる所得をもとに、所定の算式で評価額を求めます。休業中であって当面操業が見込まれない鉱山や、操業中であっても所得が低い場合は、鉱山に投下した鉱業のための財産の価額をもとに評価します。採掘中の場合はまだ所得がないので、その鉱山に投下した費用の70%の価額で評価します。
【財産評価基本通達】
(評価単位)
155 鉱業権の価額は、鉱業権の存する鉱山の固定資産及び流動資産と一括して、鉱山ごとに評価する。(租鉱権の評価方法)
158 租鉱権の価額は、租鉱権が設定されている鉱山についてその租鉱権者が設備した固定資産及び流動資産と一括して、鉱山ごとに評価する。