相続財産に上場株式が含まれている場合、その評価は次のいずれかの価額のうち、最も低いもので行います。
● 課税時期(=被相続人が亡くなった日または贈与を受けた日)の最終価格(=終値)
● 課税時期の属する月の毎日の最終価格の平均額
● 課税時期の属する月の前月の毎日の最終価格の平均額
● 課税時期の属する月の前々月の毎日の最終価格の平均額
評価する株式が複数の株式市場に上場しているときは、どの取引所の価格で評価するかを選択することができます。また、例外として、負担付贈与や個人間の売買で取得したものについては、課税時期の最終価格によって評価します。
株式市場の休場や売買の不成立などによって、課税時期に最終価格がつかない場合の評価はどのようにすればいいのでしょうか。財産評価基本通達では、課税時期に最終価格がない場合の上場株式の評価について、その方法を定めています。
1.課税時期に最終価格がない場合の評価方法
上場株式の評価において、課税時期に最終価格がない場合は、課税時期の前日以前または翌日以後の最終価格のうち、課税時期に最も近い日の最終価格を課税時期の最終価格とします。
課税時期が三連休の中間の日であるときなどのように、課税時期に最も近い日の最終価格が、課税時期の前日以前と翌日以後の両方にあるときは、それらの平均額を課税時期の最終価格とします。
(1) 株式が下記のとおり取引された場合、課税時期に最も近い日の最終価格は14日の780円なので、課税時期の最終価格は780円になります。
14日 780円
15日 休場日・・・課税時期
16日 休場日
17日 800円
(金額はいずれもその日の最終価格を表します。以下についても同様です。)
(2) 株式が下記のとおり取引された場合、課税時期に最も近い日の最終価格は21日の810円と25日の790円の2つあります。この場合、810円と790円の平均である800円を課税時期の最終価格とします。
21日 810円
22日 休場日
23日 休場日・・・課税時期
24日 休場日
25日 790円
2.配当落ちや権利落ちがある場合
株式の売買注文が成立してから受け渡しが行われるまでは、市場の休場日を除いて3日(3営業日)かかります。配当を受け取る権利が確定する日の3営業日前が、権利の確定に間に合う最終売買日となります。その翌日は権利の確定には間に合わなくなり、この日を配当落ちの日といいます。同じように、新株の割り当てについては、権利落ちの日といいます。配当落ちや権利落ちがある場合には、例外的な取り扱いが定められています。以下では、配当落ちと権利落ちをあわせて「権利落ち」と表記します。
(1) 課税時期が権利落ちの日の前にある場合は、課税時期の前日以前で課税時期に最も近い日の最終価格を課税時期の最終価格とします。
株式が下記のとおり取引された場合、課税時期が権利落ちの日の前にあるため、課税時期の前日以前の最終価格である26日の710円を課税時期の最終価格とします。
26日 710円
27日 休場日
28日 休場日・・・課税時期
29日 660円・・・権利落ち日
(2) 課税時期が権利落ちの日から権利確定の日までの間にある場合は、権利落ちの日の前日以前で課税時期に最も近い日の最終価格を課税時期の最終価格とします。
株式が下記のとおり取引された場合、課税時期が権利落ちの日から権利確定の日までの間にあるため、権利落ち日の前日以前の最終価格である27日の700円を課税時期の最終価格とします。
27日 700円
28日 売買不成立
29日 売買不成立・・・権利落ち日
30日 売買不成立・・・課税時期
31日 670円・・・権利確定の日
(3) 課税時期が権利確定の日の後にある場合は、課税時期の翌日以後で課税時期に最も近い日の最終価格を課税時期の最終価格とします。
株式が下記のとおり取引された場合、課税時期が権利確定の日の後にあるため、課税時期の翌日以後の最終価格である23日の790円を課税時期の最終価格とします。
19日 820円
20日 休場日・・・権利確定の日
21日 休場日・・・課税時期
22日 売買不成立
23日 790円
なお、課税時期の属する月以前3か月間に権利落ちがある場合は、月ごとの最終価格の平均額について特例が定められているので留意する必要があります。
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