被相続人が非上場の株式会社のオーナー社長であった場合、死亡時に会社から弔慰金が支払われることがあります。そのとき、会社の評価にはどのような影響があるのでしょうか。ここでは、まず取引相場のない株式の評価方法のうち、純資産価額による評価について確認し、次いで弔慰金の相続税法上の取扱いについて説明します。
1.取引相場のない株式の評価方法
取引相場のない株式の相続税法上の評価は、会社の規模や株主の支配の状況に応じて、類似業種比準価額、純資産価額、両者の併用または配当還元価額によって行います。純資産価額で評価するときは、会社の資産から負債を差し引いて、さらに評価差額に対する法人税額を差し引いたものを純資産価額とします。純資産価額の計算方法は、次のように細かく規定されています。
・ 資産は相続税評価額によって計算した金額とします。ただし、課税時期前3年以内に取得または新築した土地や家屋などは、課税時期における通常の取引価額によって計算します。
・ 負債には、貸倒引当金などの引当金または準備金は含みません。一方、公租公課のうち事業年度開始の日から課税時期までの期間に対応する部分、課税時期以前に賦課された固定資産税のうち未払いのもの、被相続人の死亡により相続人に支給される退職手当金などの額は負債に含みます。
・ 評価差額に対する法人税額は、帳簿価額で計算した資産の額と相続税評価額で計算した資産の額の差額に法人税率を掛けた値とします。
2.相続税法上の弔慰金の取扱い
被相続人の死亡によって相続人等が受け取る弔慰金、花輪代、葬祭料などは、相続税の課税対象とはなりません。ただし、次に掲げる金額を限度とし、それを超える部分は退職手当金等として相続税の課税対象となります。
・ 業務上の死亡であるとき:賞与を除く普通給与の3年分
・ 業務上の死亡でないとき:賞与を除く普通給与の半年分
また、弔慰金などの名目で受け取っても、実質的に退職手当金に該当するものは相続税の課税対象となります。退職手当金等に該当するかどうかは、会社に退職給与規程などがあればその規程により、ない場合は、被相続人の地位、功労等を考慮し、類似の事業で被相続人と同様な地位にある人が受けるであろう金額を勘案して判定します。
3.株式の評価における弔慰金の取扱い
被相続人が死亡したことによって、評価会社が相続人に支払った弔慰金は、純資産価額の計算上、負債とはなりません。ただし、弔慰金のうち、非課税限度額を超えて退職手当金として相続税の課税対象となる金額は、純資産価額の計算上、負債として差し引くことができます。
評価会社が支払った弔慰金の取扱い
【照会要旨】
1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)の計算に当たって、被相続人の死亡に伴い評価会社が相続人に対して支払った弔慰金は負債として取り扱われますか。
【回答要旨】
退職手当金等に該当し、相続税の課税価格に算入されることとなる金額に限り、負債に該当するものとして取り扱われます。
(理由)
被相続人の死亡に伴い評価会社が相続人に対して支払った弔慰金については、相続税法第3条(相続又は遺贈により取得したものとみなす場合)第1項第2号により退職手当金等に該当するものとして相続税の課税価格に算入されることとなる金額に限り、株式の評価上、負債に該当するものとして純資産価額の計算上控除します。
したがって、同号の規定により退職手当金等とみなされない弔慰金については、純資産価額の計算上、負債に該当しません。
【関係法令通達】
相続税法第3条第1項第2号
財産評価基本通達186(3)
相続税法基本通達3-18~20
※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。
なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問い合わせ→記事内容に関するお問い合わせ」よりお問合せ下さい。
但し、記事内容に関するご質問や問い合わせにはお答えできませんので予めご了承下さい。