株主となる権利とは、一定の期間に株式の引受けをする権利のことをいいます。ここでは株主になる権利の価額について、相続税法上の評価方法を説明します。
1.株主となる権利とは
株主となる権利とは、次に掲げる期間に株式の引受けをする権利のことをいいます。
● 会社設立の場合
株式の申し込みに対して割り当てがあった日の翌日から会社の設立登記の日の前日までの間。
会社の発起人が引受けをする株式は、その引受けの日から会社の設立登記の日の前日までの間。
● 会社設立後の株式の割り当ての場合
株式の申し込みに対して割り当てがあった日の翌日から払込期日までの間。
2.会社設立の場合の株主となる権利の評価
会社設立の場合の株主となる権利の価額は、課税時期、つまり被相続人が亡くなった日以前に株式1株について払い込んだ金額で評価します。
3.会社設立後の場合の株主となる権利の評価
会社設立後の株式の割り当ての場合の株主となる権利の価額は、割り当てられる株式の種類によって、次のような方法で評価します。
● 上場株式
原則として、課税時期の日の終値と、過去3か月の終値の月間平均値のうち最も低い価格で評価します。割り当てられる株式について発行日決済取引が行われている場合も同様に評価します。
● 気配相場等のある株式
具体的には、公開途上にある株式をいいます。株式の上場にあたって株式の公募または売出しが行われる場合は、その株式の公開価格で評価します。公募または売出しが行われない場合は、過去の取引価格を勘案して個別に評価することになります。
● 同族株主が取得した取引相場のない株式
会社の区分に応じて、類似業種比準価額、純資産価額または両者の併用で評価した価額を、財産評価基本通達187の(2)に定める算式(※)で修正した金額で評価します。
● 同族株主以外の株主が取得した取引相場のない株式
年間の配当の額をもとにした、配当還元価額で評価します。
● 同族株主が取得した特定の評価会社の株式
特定の評価会社とは、比準要素数(1株当たりの配当額、利益金額、純資産価額)が1または0の会社、株式保有特定会社、土地保有特定会社、開業後3年未満の会社、開業前または休業中の会社、清算中の会社を指します。これらの会社の区分に応じて定められた方法(主に純資産価額)で評価した価額を、財産評価基本通達187の(2)に定める算式(※)で修正した金額で評価します。
● 同族株主以外が取得した特定の評価会社の株式
配当還元価額で評価しますが、開業前または休業中の会社、清算中の会社は配当がないので、別途定められた方法で評価します。
(※)(財産評価基本通達179≪取引相場のない株式の評価の原則≫の定めによって評価した価額+割り当てを受けた株式1株につき払い込むべき金額×株式1株に対する割り当て株数)÷(1+株式1株に対する割り当て株式数)
いずれの場合も、その株主となる権利について課税時期の翌日以後に払い込むべき金額がある場合には、その金額を差し引いた金額で評価します。
なお、財産評価基本通達の条文にある177≪気配相場等のある株式の評価の特例≫は、登録銘柄および店頭管理銘柄について定めたものですが、現在は、登録銘柄および店頭管理銘柄に該当する株式はありません。
【財産評価基本通達】(特定の評価会社の株式)
(株主となる権利の評価)
191 株主となる権利の評価は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げるところによる。(昭47直資3-16・昭58直評5外・平2直評12外・平12課評2-4外・平18課評2-27外改正)
(1) 会社設立の場合の株主となる権利の価額は、課税時期以前にその株式1株につき払い込んだ価額によって評価する。
(2) (1)に該当しない株主となる権利の価額は、その株主となる権利の発生している株式について、169≪上場株式の評価≫、174≪気配相場等のある株式の評価≫、177≪気配相場等のある株式の評価の特例≫、187≪株式の割当てを受ける権利等の発生している株式の価額の修正≫、188-2≪同族株主以外の株主等が取得した株式の評価≫若しくは189-7≪株式の割当てを受ける権利等の発生している特定の評価会社の株式の価額の修正≫の定めにより評価した価額又は189≪特定の評価会社の株式≫に定める特定の評価会社の株式を188-2≪同族株主以外の株主等が取得した株式の評価≫の本文の定めにより評価した価額に相当する金額(課税時期の翌日以後その株主となる権利につき払い込むべき金額がある場合には、その金額からその割当てを受けた株式1株につき払い込むべき金額を控除した金額)によって評価する。ただし、課税時期において発行日決済取引が行われている株式に係る株主となる権利については、その割当てを受けた株式について、169≪上場株式の評価≫の定めにより評価した価額に相当する金額(課税時期の翌日以後その株主となる権利につき払い込むべき金額がある場合には、その金額から払い込むべき金額を控除した金額)によって評価する。