亡くなった人が、企業の役職員であった場合は、会社からストックオプションが付与されていることがあります。財産評価基本通達には、ストックオプションの評価方法についても定めがあります。
1.ストックオプションとは
ストックオプションとは、企業の役職員が将来の一定の時期(権利行使可能期間)に定められた価額(権利行使価額)で自社の株式を取得できる権利のことをいいます。市場価格が権利行使価額より高ければ、権利行使によって取得した株式を市場で売却することで差益が得られます。株価が上がれば差益は大きくなるため、業績向上への動機づけになると考えられています。
2.ストックオプションの価額の評価
財産評価基本通達では、ストックオプションのうち、株式を取引所に上場している会社、または上場を予定している会社について、評価の方法を定めています。非上場会社のストックオプションについては、権利行使価額の決定方法や権利行使によって取得する株式の譲渡方法などを勘案して、個別に評価することになります。
① 課税時期が権利行使可能期間内にある場合
課税時期、つまり被相続人が亡くなった日が権利行使可能期間内にある場合、ストックオプションの価額は次の算式によって評価します。
(課税時期における株式の価額-権利行使価額)×ストックオプション1個の行使によって取得できる株式の数
「課税時期における株式の価額」は、上場株式は、原則として課税時期の日の終値と過去3か月の終値の月間平均値のうち最も低いもので評価します。上場の途上にある株式で、上場にあたって株式の公募または売出しが行われる場合は、その株式の公開価格で評価します。公募または売出しが行われない場合は、過去の取引価格を勘案して個別に評価することになります。
そのほか、課税時期の日に終値がない場合や、権利落ち、配当落ちなど特殊なケースについては、財産評価基本通達の定めによって評価します。
また、課税時期における株式の価額が権利行使価額を下回る場合は0とします。
② 課税時期が権利行使可能期間前である場合
課税時期が権利行使可能期間前であっても、相続開始と同時に相続人が権利を行使できる場合は、①の場合と同様に評価することになります。相続人がストックオプションを取得できても、権利行使可能期間まで権利を行使できない場合は、個別に評価することになります。
3.ストックオプションが相続できない場合も
ストックオプションを発行する企業によっては、ストックオプションの相続を認めていないか、相続に制限を設けている場合があります。ストックオプションが付与されるときの契約書で、内容をよく確認することが重要です。
【財産評価基本通達】(特定の評価会社の株式)
(ストックオプションの評価)
193-2 その目的たる株式が上場株式又は気配相場等のある株式であり、かつ、課税時期が権利行使可能期間内にあるストックオプションの価額は、課税時期におけるその株式の価額から権利行使価額を控除した金額に、ストックオプション1個の行使により取得することができる株式数を乗じて計算した金額(その金額が負数のときは、0とする。)によって評価する。この場合の「課税時期におけるその株式の価額」は、169((上場株式の評価))から172((上場株式についての最終価格の月平均額の特例))まで又は174((気配相場等のある株式の評価))から177-2((登録銘柄及び店頭管理銘柄の取引価格の月平均額の特例))までの定めによって評価する。(平15課評2-15外追加)