相続財産に、企業組合、漁業生産組合等の組合(以下、企業組合等といいます)への出資がある場合の、相続税法上の評価方法についてご紹介します。
~目次~
1.企業組合等の出資の評価
企業組合等の出資の価額は、課税時期、つまり被相続人が亡くなった時点における、企業組合等の純資産価額をもとに、出資の持分に応じた価額で評価することとされています。純資産価額は、相続税評価額で計算した資産の額から負債の額を差し引き、さらに、法人税等に相当する額(帳簿価額で計算した資産の額と相続税評価額で計算した資産の額の差額に37%を掛けた値)を差し引いて求めます。
2.定款に特別の定めがある場合
企業組合等の定款に、「脱退時は払込出資金額を限度に持分を払い戻す」旨の定めがある場合、組合の根拠法令によって評価の方法が異なります。
法令の規定により払込出資金額しか返還されないことが担保されている場合
この場合、企業組合等の出資の価額は払込出資金額で評価することになります。消費生活共同組合が該当します。
法令の規定により払込出資金額しか返還されないことが担保されていない場合
定款によって「脱退時は払込出資金額を限度に持分を払い戻す」と定めても、法令による担保がない場合は、企業組合等の出資の価額は純資産価額をもとに、出資の持分に応じた価額で評価します。事業協同組合や企業組合などが該当します。なお、相続人が出資持分を承継することなく、出資の払戻しを受けたときには、その金額で評価します。
3.その他の組合への出資との相違点
上記の純資産価額をもとにした評価方法は、それ自体が1個の企業体として営利目的の事業を行う組合に対する出資の価額を評価するときに適用します。企業組合、漁業生産組合、事業協同組合のほか、農事組合法人も純資産価額をもとに評価します。
農業協同組合のように、組合員に対する奉仕を目的とするのであって、営利目的の事業を行わない組合に対する出資の価額については、払込済の出資金額で評価します。農業協同組合のほか、漁業協同組合、信用金庫、信用組合に対する出資についても同様です。
協業組合は組合という形態ではあるものの、営利事業を目的とし、組合員が事業者に限られるなど、実態は持分会社に近いと考えられます。そのため、協業組合に対する出資の価額は、類似業種比準価額、純資産価額もしくは両者の併用、または配当還元価額で評価することになります。出資割合が大きいなど、その会社を支配しているか否か、あるいはその会社の規模によって評価の方法が定められています。
【財産評価基本通達】(特定の評価会社の株式)
(企業組合等の出資の評価)
196 企業組合、漁業生産組合その他これに類似する組合等に対する出資の価額は、課税時期におけるこれらの組合等の実情によりこれらの組合等の185≪純資産価額≫の定めを準用して計算した純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)を基とし、出資の持分に応ずる価額によって評価する。(昭58直評5外改正)