会社のオーナーである社長が自身の会社に貸し付けた金銭をオーナー貸付金と言います。注意したいのが、オーナー貸付金がある状態のまま、相続が起きた場合です。相続では、貸付金の金額がそのまま評価の対象になってしまうためです。
~目次~
1.オーナー貸付金の相続税評価方法
>>無料会員に入会すると、実務で使えるオリジナル書式をプレゼント!! 国税庁の財産評価基本通達によりますと、貸付金の評価においては、被相続人が貸したお金に加え、被相続人が亡くなるまでに受け取るはずだった分も含めた利息を加算した額で評価することとなっています。ただし、オーナー貸付金の場合は利息を設定するということは少ないと思います。利息がない場合は、返還されていない貸付金全額を対象に評価を行うということです。つまり、5,000万円の貸付金があれば、5,000万円が相続税の対象になるということになります。オーナーである社長からすれば、ただ自身の財産を融資しただけであるにも関わらず税金が発生するということになるのです。
ちなみに返ってくる見込みが確実にないということであれば相続税の対象から外すことは法律により認められています。貸付金のある対象の会社が、半年以上休業している状態である場合や、特別清算を行っている場合です。このような特別な状況でなければ、わずかでも返ってくる可能性があるとして相続税の対象となってしまう可能性が高いと言えます。
2.オーナー貸付金についての4つの相続税対策
それではオーナー貸付金における相続税について全く対策できないのかということですが、会社の解散や債権放棄などを行えば相続税の対策をとることが可能です。
2-1.債権放棄(債務免除)
債権放棄、つまり会社のオーナーである社長が会社に対して貸付金を返してもらう権利をなくしてしまうということです。債権放棄においては、「債権放棄通知書」を会社に提出する必要があります。権利を放棄することによって、相続税の対象から取り除いてしまうことができるという訳です。
ただし、注意したいのが、権利が放棄されることによって、会社側は貸付金の返済義務がなくなった代わりに、貸付金分が利益となってしまうということ。浮いた貸付金分については、法人税の対象になる可能性があります。会社に赤字がある場合は相殺できますが、利益として挙がってしまうという点には注意しなければなりません。
さらに、利益として計上されることによって会社の負債がなくなることで、資本にあたる株価も上がってしまいます。社長の家族などが株式を保有している場合、みなし贈与になってしまう可能性がありますので、利益計上によって大幅な株価の上昇がないかも確認しておきたいところです。
2-2.貸付金の贈与
生前に、貸付金を子などに贈与するというものです。贈与税がかかる可能性がありますが、長期間に渡り贈与していけば、贈与税を節税し、相続税を回避することができます。会社への債権放棄を避けたい場合に有効な方法です。ただし貸付金の債権者の名前の書き換えや、贈与税は贈与を受けた子などが払う必要があるなど、いくつか手続きが発生することに注意しましょう。
2-3.会社を解散する
将来に亘って貸付金の回収が不可能であり、会社の業績自体も振るわないという場合は、会社を解散するという手段も考える必要があるでしょう。もちろん、会社の解散にあたってお金が残った場合は、各債権者への借金返済に充てられますが、清算によって自動的に債権は消滅してしまいます。オーナーとしては苦渋の決断ではあると思いますが、将来を考え存続が難しい場合は思い切って決断をすることも必要かもしれません。
2-4.DES(デット・エクイティ・スワップ)
デット・エクイティ・スワップ、通称DESとは、貸付金を株式に変えるというものです。会社が貸付金の返金の免除を受ける代わりに、株式を発行します。当初は貸付金の債権者が経営権を得やすくなるということをメリットとして行われていた方法ですが、相続税対策として中小企業でも行われるようになってきました。
貸付金が株式になることでも相続税は発生しますが、株式に代わることによって、相続税の評価は、貸付金の額ではなくて株式の相続税評価に限定されることになります。相続税を節税することに繋がるのです。
DESも含めて、基本的にオーナー貸付金の相続税対策をするのなら相続が始まる以前からしっかりと対策をしておくことが大切です。