生命保険契約者及び保険料負担者の地位を相続によって取得した者は、被相続人が支払った保険料を自ら支払ったものと見做されます。では、その場合、被相続人が既に支払った保険料の取扱いはどのようになるのでしょうか。以下では、このことについて解説します。
みなし相続財産について
本題に入る前に、みなし相続財産について解説します。
例えば、被保険者をB、保険契約者をA、保険料負担者をA、保険受取人をCとする生命保険契約があったとします。
ここで、保険契約者であり、かつ、保険料を負担していたAが亡くなり、保険契約者地位がAからBに相続されたとします。
この場合、Bが取得した保険契約上の地位(権利)のうち、被相続人であるAが契約発効から相続開始時点までに払い込んだ保険料の全額に相当する部分は、本来は生命保険に関する権利なので相続財産ではありませんが、相続財産と見做して相続税の課税対象財産(みなし相続財産)となります。
上記の例では、Aが保険料の全額を負担していますから、Bが相続によって取得した生命保険の権利のすべてが、相続財産となります。
なお、このことは、相続税法第3条第1項第3号によって規定されています。
契約者が取得したものとみなされた生命保険契約に関する権利について
相続税法基本通達3-35においては、相続税法第3条第1項第3号の規定により、保険契約者が相続又は遺贈によって取得したものと見做される生命保険に関する権利は、その見做された時以降は、当該契約者が自ら保険料を負担したものと同様に取り扱うと規定しています。
この規定を上記の例に当てはまると、Aから生命保険契約上の権利を相続によって取得したBが、Aの死後、保険料負担者となり、保険料を継続して支払っていたとします。
ここで、今度は、Bが亡くなり、保険受取人であるCが生命保険金を受け取ったとします。
この場合、Cが取得した保険金のうち、被相続人であるBが払い込んだ保険料の全額に対応する部分が、みなし相続財産として、Cの課税対相続財産となります。
ここで、同通達による解釈がなければ、Cが取得した保険金は、A及びBが負担した保険料の対価ですから、本来であれば、Cが取得した保険金のうち、Bの払込済保険料額/ Aの払込済保険料額+Bの払込済保険料額で定める割合に対応する部分のみが、相続財産となります。
しかし、同通達の解釈により、AからBに保険契約上の権利移転があった時点で、Aが支払った保険料は、Bが支払ったものと見做されます。
これにより、Bの死亡によりCが取得した生命保険金の全額が、Cの相続税課税財産となります。