相続税法上の「墓所、霊びょう」の意義

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相続税法第12条第1項第2号では、墓所・霊びょう及び祭具並びにこれに準ずるものは、相続税の非課税財産とすると規定しています。従って、相続された墓所や霊びょうは、相続税の課税対象となる財産には含まれません。以下では、相続税が課税されない墓所や霊びょうの意義について説明します。

相続税基本通達による解釈

相続税の法令解釈を示した相続税基本通達によれば、相続税法上の「墓所・霊びょう」は、
墓地、墓石及びおたまやのようなもののほか、こられのもの尊厳を維持に要する土地その他の物件を含むものとして取り扱うものとする、とされています。

従って、相続税法上の非課税財産となる「墓所・霊びょう」とは、墓石や墓地、おたまやなどが該当します。なお、「おたまや」とは、死者の遺骨をお宮などにお祭りする場合に、
そのお宮の建物や敷地のことをいいます。

寺院や民間団体の運営する墓苑に墓地がある場合の取り扱いについて

寺院や民間団体の運営する墓苑等の場合、墓石の所有権は被相続人が所有していたとしても、墓地の敷地は寺院や運営団体が所有し、被相続人は墓地の使用権を有しているにすぎないという場合があります。この場合には、相続税非課税財産は、墓地の所有権ではなく、使用権ということになります。

寺院や霊園のような集合墓地ではなく、個人の私有地に墓地がある場合には、墓地の所有権は被相続人にありますが、この場合には、墓地の所有権が非課税財産となります。

ちなみに、庭内の祠の敷地が日常礼拝の対象となる財産として相続税の非課税財産となるか否かについて、最近まで解釈について争いがありましたが、墓地や霊びょうの敷地については、基本通達にそれが相続税の非課税財産となることが明確に表示されているため、
庭内神しも非課税となります。

民法における墳墓の取り扱いについて

民法第897条第1項では、系譜、祭具及び墳墓の所有権は、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべきものが承継すると規定しています。一般の財産の所有権は、民法の規定に従って
承継されますが、墳墓などの日常礼拝に関する財産については、慣習に従って承継すべしと規定しています。

この条文上の墳墓は、相続税法上の非課税財産である「墓所・霊びょう」と同一の概念です。よって、「墓所・霊びょう」は、相続においても、相続税の計算においても、一般の財産とは異なる特殊な扱いを受けることになります。

従って、相続財産の中にこられの日常礼拝の対象となる財産が含まれる場合には、一般の財産とは区別して、それぞれ別々に取り扱う必要があります。日常礼拝の対象となる財産の承継方法は、現在の民法の規定になじむものではなく、どちらかというと、戦前の民法の家督相続の規定になじむものと言えます。

相続税基本通達 12条 相続税の非課税財産関係
1項(相続税法上の「墓所、霊びょう」の意義)
民法 第897条
1.系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2.前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。


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