相続により中小企業の事業を承継する場合の税負担軽減制度に、相続税の納税猶予の特例があります。この特例を受けるには、特例適用の要件を満たしていることに関して経済産業大臣により認定を受けなければなりません。相続税の納税猶予の特例要件と、特例の対象となる株式数の計算方法について解説します。
~目次~
1.「非上場株式等についての相続税の納税猶予の特例」とは?
>>無料会員に入会すると、実務で使えるオリジナル書式をプレゼント!!「非上場株式等についての相続税の納税猶予の特例」とは、中小企業の事業承継の際、後継者の負担を軽減する目的で設定された特例です。以前は、発行済株式数の3分の2までの部分について80%、つまり、最大でも3/2×80%=約53%部分までしか納税が猶予されませんでしたが、平成30年の税制改正により、相続により取得した株式の全部について100%の納税猶予が可能となりました。
特例適用後に、5年以内に事業継続要件を満たさなくなった場合や、それ以降に特例対象の株式を譲渡や贈与した場合には、状況に応じた猶予税額および利子税の納付が必要です。また、後継者が死亡した場合や、後継者へ贈与した場合、会社の倒産などの場合には猶予されていた一部または全部の納税が免除されます。
2.「非上場株式等についての相続税の納税猶予の特例」の要件
相続税の納税猶予を受けるには、相続開始後8か月以内に円滑化法に基づき、一定の要件を満たしていることを都道府県知事から認定されなければなりません。「会社」、「被相続人(先代経営者)」、「相続人(後継者)」ついてそれぞれ要件が定められています。
2-1.「会社」の要件(主なもの)
会社の要件として以下に該当しない会社であることが必要です。
- 上場会社や、中小企業者以外の企業
- 風俗営業会社、資産管理会社(一定の要件を満たす場合を除く)
- 総収入がゼロ、あるいは従業員数が1人未満(一定の外国会社の場合は5人未満)
2-2.「被相続人」の要件(主なもの)
会社の代表権を持ったことがあり、相続開始直前に、被相続人と同族関係者で総議決権数の50%以上を保有し、さらにその同族関係者の中で筆頭株主であったことが必要です。
2-3.「相続人」の要件(主なもの)
相続が開始されてから5か月以内に、会社の代表権を持っていること、相続人と同族関係者で総議決権数の50%以上を保有し、さらに相続によりその同族関係者の中で筆頭株主となることが必要です。