相続財産が不動産の場合、前提として必ず不動産の評価額を知る必要があります。この評価額をもとにして相続税が課税されることとになっているからです。ところが、土地の価格には、公示価格(基準価格)、相続税路線価、固定資産税評価額の3つの公的指標があります。そのため、相続した不動産について評価額を算出するのは複雑かつ困難な作業であるといっていいでしょう。
1.相続した不動産の評価額はどうやって計算するのか?
では、相続した不動産の評価額は実際にどううやって算出するのでしょうか。
この点、相続税法第22条は「相続、遺贈又は贈与によると取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による」と規定しています。
ここでの「時価」がどういうものかということかという問題があります。財産評価基本通達の評価の原則に従うと、時価とはこの通達の定めにより評価された価額であり、路線価方式等で評価された価額をもって時価と解釈されています。
したがって、相続した不動産の評価額は路線価、つまりその年の1月1日を基準とする不特定多数が通行する道路に面している標準的な宅地の1平方メートルあたりの価額が時価となります。そして、相続税法上の時価というのは、路線価に財産評価基本通達で規定された補正率を乗じて算出されます。
ところが、その補正率は画一的な基準でしかないため、不動産の形状はそれぞれ異なるとそのまま適用するには問題があります。例えば、算出された価格が鑑定評価の価格を上回るという場合があります。
このような場合には、相続税額を抑制するという目的で相続財産は鑑定評価を行って時価を算出して申告するということが可能です。
2.路線価よりも時価が大幅に下回る場合はどうするのか?
では路線価よりも時価が大幅に下回る場合とはどのような場合でしょうか。
現在は土地の価格が急騰したり暴落するという状況ではないため、相続の対象となる土地に個別の減価要因がある場合が大半だと考えられます。これは路線価がその地域の標準的な宅地を想定していることに原因があります。
そのため、対象となる土地が次のような減価要因に該当するかどうかについて留意しなくてはなりません。
【留意点】
・間口が2メートル未満のため建築不可
・間口が2メートル以上あるが奥行きが異常に長く条例により建築不可
・道路面から数メートルの高低差があり実質の建築面積が狭い
・極端な不整形地で土地の有効利用が著しく低下
・無道路地のため建築不可
・土壌汚染のある土地
なお、申告を行う時には、時価であることを明確にさせるために、不動産鑑定評価書など時価が正当なものであることを客観的に証明するための資料をいっしょに提出するといいでしょう。これらの書類により税務署は正当な時価であるかどうかを検証することが可能となります。