相続税財産評価基本通達第2章第2節20-4において、がけ地を有する宅地の評価について規定されています。よって、がけ地を有する宅地を相続した場合のその財産評価は、この基本通達により評価されます。以下では、この通達に沿って、がけ地を有する宅地の評価について解説します。
財産評価基本通達におけるがけ地を有する宅地の評価について
財産評価基本通達第2章第4節20-4では、がけ地のために通常の用途に供することができない部分を有する宅地の相続財産評価は、がけ地部分ががけ地でないとした場合の宅地の評価にがけ地補正率を乗じて計算した価額とする、と規定しています。
がけ地補正率とは
がけ地補正率は、評価対象の宅地の全体面積に対する、がけ地により通常の用途に供することができない部分の面積の割合と、がけ地の面する方角に応じて、0.93から0.53の範囲内で定められています。
がけ地を有する宅地の評価に必要となるがけ地補正率表は、国税庁のホームページで公開されていますから、誰でもインターネットから閲覧することができます。
がけ地を有する宅地の相続財産評価の事例
例えば、全体面積が100㎡、そのうちの50㎡ががけ地で通常の宅地の用途には利用できない宅地を相続したとします。なお、このがけ地の斜面は、南側に向けて下がってゆくとし、
この宅地の路線価を10万円/㎡と仮定します。
ここで、この宅地の相続税財産評価額を計算するとします。その場合、まず、全体面積に対するがけ地面積の割合を求めます。このケースでは、50㎡/100㎡で0.5になります。次に、がけ地補正率表から、がけ地が南向きでがけ地割合が0.5の補正率を確認します。
すると、補正率は0.82となります。
がけ地を有する宅地の相続税財産評価額は、がけ地がないとした場合の宅地の評価額にがけ地補正率を乗じた価額となりますから、これに上記の例を当てはめると、
(50㎡+50㎡=100㎡)×10万円/㎡×0.82=820万円
となります。
がけ地補正率表にない方角を向いているがけ地を有する宅地の評価について
がけ地補正率表に定めるがけ地の方角は、東西南北の4方向に限定されています。しかし、
がけ地を有する宅地を評価する際に、対象宅地のがけ地が、例えば、東南や北西の方向を向いていた場合には、がけ地補正率はどうなるのでしょうか。
この場合は、各方向のがけ地補正率を平均した数値を用います。例えば、全体面積に対するがけ地の割合が0.5で、がけ地が南東の方向を向いていた場合、南向きでがけ地割合が
0.5の補正率は0.82で、東向きのがけ地割合が0.5の補正率は0.81ですから、この宅地の評価に用いるがけ地補正率は、(0.82+0.81)/2=0.815となります。