建築基準法によると、建物の敷地は原則幅員4メートル以上の道路に接していなければならないことになっています。ですが幅員4メートル未満の道路も多く存在するため、このままでは建物の再建築ができません。
このような状況を回避するために、道路の中心線から2メートルの地点まで境界線を後退させる「セットバック」という方法が取られることがあります。セットバック部分は、完了前後でその土地の評価額が変化しますので、効果的な相続税の節税対策を考えた場合、そのタイミングを考慮する必要があります。
ここではそれを分かりやすく解説しています。
セットバックの定義とセットバック完了前後の比較を踏まえての評価
それではセットバックの定義と、セットバック完了前後の評価額を詳しく見てみましょう。
(1)セットバックの定義
セットバックとは、道路の中心線(一方通行の場合もあるので必ずしもセンターラインではない)から、外側に向かって2メートルの地点まで境界線を後退させることです。
なぜこのような方法が取られるかは、次の セットバックの必要性をご覧ください。
例:幅員2.7メートル(270cm おおよそ1間半)の道路のセットバック後退距離
400cm(土地の間口が接している前面道路の幅員の基準値)- 270cm(実際の道路の幅員)
÷ 2(道路の中心線から左右両方向に、外側に向かって境界を後退させせるため)
= 65cm(セットバック後退距離)
(2)セットバックの必要性
なぜセットバックが必要かというと、古くからある市街地においては、例えば1間半(約2.7メートル)といったように、尺貫法の間(けん)を基準とした道路も多く存在するため、このままだと建築基準法で定めるところの、建物の敷地は原則幅員4メートル以上の道路に接していなければ建築を認めない、という部分に抵触してしまい、建物の再建築ができなくなってしまうからです。
(3)セットバック完了前の相続税評価
セットバックが完了する以前に相続税申告のための財産評価を行う場合は、セットバックすべき部分について、通常どおりに算出した評価額から70%相当額を控除して評価します。
この70%相当額の控除は、財産評価基本通達を元に決められています。財産評価基本通達とは、相続税法におけるの財産の評価方法に関する通達で、法律ではありませんが、国税においてはそれに近い拘束力を持ちます。
(4)セットバック完了後の相続税評価
既にセットバックが完了した土地の相続税評価については、前述の財産評価基本通達において、「私道の用に供されている宅地の評価」が適用されます。これによると、通常の評価額の30%相当額で評価されることになります。
一方この通達には、「現況が前面の公道と一体となって舗装されており、不特定多数の人の通行に供する状態であれば公衆用道路として課税しない」(100%控除)ともあります。
どちらが適用されるのかは、現況を説明できる資料を揃えて課税当局と交渉する必要があるので、こういった仕組みを知っていることが大切です。