自宅の敷地内に神社や祠(ほこら)がある場合、相続税法ではこれらのものも財産評価の対象となります。このような庭内神しについては、墓所、霊びょうと同じく非課税財産とされています。その敷地については非課税財産ではありませんでしたが、平成24年7月に取扱いが変更され、一定の条件のもと非課税財産となりました。取り扱いが変更された経緯を含めて、庭内神しの敷地の評価について説明します。
1.庭内神しの定義
庭内神しとは、屋敷内にある神社や祠などのように、ご神体をまつり日常礼拝の対象となっているものをいいます。ご神体とは、特定の者または地域住民などの信仰の対象とされているものをいい、具体的には、不動尊、地蔵尊、道祖神、庚申塔、稲荷などがあげられます。
相続税法第12条第1項第2号では、「墓所、霊びょう及び祭具並びにこれらに準ずるもの」は非課税財産とされており、さらに相続税基本通達12-2では、「「これらに準ずるもの」とは、庭内神し、神たな、神体、神具、仏壇、位はい、仏像、仏具、古墳等で日常礼拝の用に供しているものをいう」と定められています。よって、庭内神しは非課税財産となります。ただし、これらのものでも、商品、骨とう品または投資の対象とするものは非課税財産とはなりません。
2.庭内神しの敷地の取り扱い
庭内神しは土地に定着しているものですが、敷地については庭内神しとは別のものであるという考えのもと、非課税財産とはなっていませんでした。
これは、相続税基本通達12-1において、「「墓所、霊びょう」には、墓地、墓石及びおたまやのようなもののほか、これらのものの尊厳の維持に要する土地その他の物件をも含む」とされているのに対し、先述の相続税基本通達12-2において、「これらに準ずるもの」として、庭内神しの土地は含まれていないことによるものと考えられます。
しかし、庭内神しの敷地への課税を不服とする訴訟が起こり、平成24年6月21日の東京地方裁判所における判決で、庭内神しの敷地を非課税財産とする判断が示されました。これを受けて、相続税法上の庭内神しの敷地の取り扱いが変更され、次の条件のもとで非課税財産とすることとなりました。
(1) 庭内神しの設備とその敷地、附属設備との位置関係やその設備の敷地への定着性その他それらの現況等といった外形
(2) その設備及びその附属設備等の建立の経緯・目的
(3) 現在の礼拝の態様等も踏まえた上でのその設備及び附属設備等の機能の面
以上の点から、その設備と社会通念上一体の物として日常礼拝の対象とされているといってよい程度に密接不可分の関係にある相当範囲の敷地や附属設備である場合。
上記の取り扱いの変更には、敷地だけでなく附属設備も含まれています。この場合の附属設備とは、神社における鳥居や、地面に敷き詰める砂利などがあげられます。