相続税の納税猶予特例の対象農地のうち、20%超の部分について、譲渡・使用収益権の設定・耕作放棄があった場合には、納税猶予確定事由に該当し、相続税の納税猶予は取り消されます。では、特例対象農地を市に寄附した場合には、当該寄附に係る特例対象農地の取り扱いはどうなのるのでしょうか。以下で解説します。
~目次~
相続税の納税猶予特例対象農地の一部の寄附に関する質疑について
相続税の納税猶予特例は、対象農地面積の20%を超える部分に対して譲渡、地上権等の設定、耕作放棄をした場合には、20%を超える譲渡等を行った日において、納税猶予の確定事由に該当し、納税猶予特例の適用が取り消され、猶予されていた相続税の支払いが必要になります。
では、例えば、特例対象農地の一部を市に寄附した場合、当該寄附に係る農地は、納税猶予の確定事由に該当する100分の20を超える譲渡があったか否かの判定において、譲渡された農地面積に含めるのかどうか、という質問が国税庁に対してなされました。
相続税の納税猶予特例対象農地の一部の寄附に関する質疑に対する回答について
この質問に対して、国税庁は以下のように回答しました。
上記の100分の20判定の対象外とされるのは、以下のような場合です。
1. 土地収用法の規定による収用等によって当該農地を譲渡した場合
2. 当該農地が都市営農農地等に該当し、かつ、生産緑地法による買取申出により譲渡した場合
3. 当該農地を、都市計画法の特定市街化区域農地等に該当するという告示があったことにより譲渡した場合
よって、納税猶予特例対象農地を市に寄附することは、上記の要件に該当しないため、
100分の20判定において、当該農地を対象外とすることはできません。
つまり、100分の20判定においては、市に寄附した農地の面積を含めて計算し、それに基づいて納税猶予の確定事由に該当するか否かを判断しなくてはなりません。
上記の質問及び回答が国税庁の質疑応答「特例農地の一部を市に寄附した場合の100分の20の判定」となります。
市に寄附した納税猶予農地が100分の20判定の対象外とならない理由
例えば、納税猶予特例適用農地の20%を超える部分について耕作放棄を行ったとします。
この場合で、100分の20判定において、市に対する対象農地の寄附が対象外だとします。
すると、耕作放棄を行った納税猶予対象農地を市に寄附すれば、特例の適用を受けたすべての農地について納税猶予は継続されます。
このケースは、農業を承継して耕作を継続するものに対して相続税を軽減するという、納税猶予特例の本誌からすると、適切であるとは言えません。
そこで、市に対する寄附した農地は、100分の20判定においてその対象外としないと定められていると推察できます。