農地の相続で遺産分割によって2人以上で農地を共有した場合、納税猶予の特例適用の有無は、それぞれの相続人がその農地で農業に従事するかによって決まります。
国税庁では次の3つの事例について回答しています。
(1) 農地を共有した相続人すべてが農業を行う場合
(2) 農地を共有した相続人のうち一人だけが農業を行う場合
(3) 農地を共有した相続人に未成年者が含まれる場合
それではそれぞれの場合、納税猶予の特例の適用はどのようになるか、詳しく見ていきましょう。
農地を複数の人で共有相続をしたときには
複数人で農地を共有相続した場合の納税猶予の特例はどのように適用されるのか、ここでは3つの例を上げて分かりやすく解説していきます。
(1)複数の相続人のすべてが農業を行う場合
とくに問題なく納税猶予の特例が適用されるのがこの事例、「複数の農業相続人のすべてが農業を行う場合」です。
相続人が一人の場合、相続した後に農業に従事するのであれば納税猶予の特例が適用されるので、これに準じた考え方です。
なおここで言う「農業相続人」とは、相続によってその農地を取得し、それ以後も継続的にその農地で農業に従事すると認められた人のことです。相続税には納税期限があるので、それまでに実際に農業を初めていなければなりません。
(2)複数の相続人の中に農業を行わない人がいる場合
もしも複数の相続人の中に農業を行わない人がいる場合は、農業を行う人に対しては前述と同じ理由で、納税猶予の特例が適用されます、しかし農業に従事しない人については、この特例は適用されません。
このようなときには、それぞれが取得した農地の割合、つまり持分を把握しておくことが重要になります。
例えば相続人Aと相続人Bの持分が相続した農地の25%ずつで、この二人はそこで農業に従事し、農業を行わない相続人Cの持分が残り全部(農地全体の50%)である場合、相続人Aと相続人Bには納税猶予の特例が適用されますが、それはそれぞれの持分の範囲だけということになります。
そして、相続人Cにはこの特例は適用されません。
(3)農地を相続する人の中に未成年者がいる場合
農地を相続する人の中に未成年者がいる場合はもう少し複雑になり、その未成年者と住居や生計を共にしている親族が農業を行う場合には、適用されることになります。
ただし、未成年者が成人になった時点で農業に従事しない場合は、農業経営ができる状況であるのに行わないと判断されることになり、結果として農業経営が廃止されたとみなされるため、納税猶予の特例は適用されません。
また、実際に農業経営を行っている親族と未成年者が住居や生計を同じくしていなかった場合にも、適用されません。