死因贈与は、遺贈と比べると法的手続きが簡単など、いくつかメリットがあります。一方で、不動産取得税や登録免許税の負担が増えるなど、デメリットや注意点があるのも事実です。死因贈与を行う前に、最低限知っておくべき項目につき、遺贈と比較しながらご紹介していきます。
1.死因贈与とは?
>>無料会員に入会すると、実務で使えるオリジナル書式をプレゼント!!死因贈与とは、贈与をする人(贈与者)と贈与をされる人(受贈者)の双方の合意によって締結される贈与契約です。契約の締結自体は、贈与者が存命中に行われますが、死因贈与契約の効力は、贈与者の死亡時より発生します。なお、契約名称は「贈与」ですが、税法上、死因贈与契約によって贈与された財産等には、贈与税ではなく相続税が課されますので、注意が必要です。
1-1.死因贈与と遺贈の相違点
死因贈与と遺贈の違いは、主に2点に集約されます。以下、各項目につき確認していきましょう。
・両者の意思に基づく「契約」か否かの違い
まず、契約の成立要件について、比較してみましょう。死因贈与契約は、贈与者が「死後、〇〇さんに△△を贈与します」との意思表示を行い、受贈者がその意思表示を承諾したら成立する契約です。一方、遺贈は、贈与者自身が遺言書を作成することによって成立する単独行為で、受贈者の承諾は不要となります。
・法的手続きの違い
遺贈は、遺言書の作成が必須条件となります。一方、死因贈与は、特段の書面の作成は必要とされませんので、極端に言えば、口頭によって贈与者と受贈者の意思が合意に至れば、契約を成立させることも可能です。なお、贈与者の死後に揉めごとが起きないよう、死因贈与契約を公正証書により作成することもできます。ただし、遺言書(公正証書遺言)とは異なり、証人は必要ありません。
1-2.死因贈与のメリットと活用方法
・メリット1:贈与する財産の配分が事前に明らかにできる
死因贈与契約を締結することにより、どれだけの財産が自身の手に渡ることになるか、贈与者が死亡する前に、受贈者にも明白となります。したがって、贈与者だけでなく受贈者にとっても安心です。さらに、不動産の贈与が契約内容に盛り込まれていれば、対象不動産につき所有権移転請求権の仮登記が可能な点もメリットとなります。
ちなみに、所有権移転請求権とは、将来、受贈者に対象不動産の所有権が移転されることを約束するものです。
・メリット2:通常の贈与よりも節税効果が期待できる
生きている間に財産の贈与が行われた場合には、基本的に贈与税がかかります。贈与税の税率は、基礎控除額110万円を差し引きした後の課税財産価格により、10%から55%まで8段階に分かれます。
一方、死因贈与を行った場合、贈られた財産に課税されるのは相続税です。相続税の税率は、贈与税と同様、10%から55%まで8段階に分かれますが、基礎控除額は「3,000万円+600万円×相続人の数」で求められる金額です。
したがって、通常の贈与ではなく、死因贈与を選択したほうが、大抵の場合低い税額が算出されます。
相続税と贈与税の税率および基礎控除額の詳細は、国税庁のホームページをご参照ください。
→相続税
→贈与税
・死因贈与の活用方法
死因贈与のメリットを生かした活用方法としては、次のような例が挙げられます。
例えば、贈与者が受贈者に対して、確実に相続してもらいたいと考え、死因贈与契約を締結することは有効な選択肢です。特に、法定相続人ではない第三者に遺産を相続させたい場合、死因贈与契約は、遺言と同等の効力を発揮します。
さらに、税額負担を最小限に抑えたい場合には、贈与税が課される通常の贈与よりも、相続税が課される死因贈与を選択したほうが金額的に有利であるケースが多く見られます。したがって、贈与のタイミングをいつにするのが最良か、慎重に検討をすすめましょう。
2.死因贈与を行う際の注意点! 不動産取得税・登録免許税の負担を考慮
・注意点1:不動産取得税の負担が増える
不動産が死因贈与された場合には、対象となる土地や建物の固定資産税評価額に対し、3%(住宅以外の建物は4%)の不動産取得税が課されます。一方、土地や建物が、法定相続人に相続された場合には、不動産取得税はかかりません。したがって、死因贈与を選択した場合、法定相続人の税負担が増えることになるため注意が必要です。
・注意点2:登録免許税の負担が増える
贈与者が亡くなった後、受贈者は、死因贈与によって取得した不動産の所有権移転登記を行い、登録免許税を支払わなければなりません。死因贈与によって土地や建物を取得した場合には、法定相続人以外への遺贈と同様、固定資産税評価額に1,000分の20を乗じた額が負担すべき税額となります。一方、相続により不動産を取得すれば、その5分の1の税額(固定資産税評価額に1,000分の4を乗じた額)で済ませることが可能です。