贈与は書面によらない贈与契約であっても、成立します。しかし、安易な口約束による贈与のトラブルを防ぐため、書面によらない贈与は履行前なら撤回することが可能です。書面によらない贈与とは何か、また、履行が撤回できるケースとはどういったものか解説していきます。
1.書面によらない贈与とは?
>>無料会員に入会すると、実務で使えるオリジナル書式をプレゼント!!贈与は当事者の合意だけで成立する諾成契約といわれるものであり、贈与者が自己の財産を無償で与える意思表示をし、相手方が受贈者として受諾の意思表示をすると成立します。贈与契約は、贈与者にのみ債務が発生する片務契約であり、受贈者は目的物引渡請求権を有しますが、無償契約ですので債務は発生しません。
書面によらない贈与として、口約束が挙げられ、口約束だけでも贈与が成立します。書面による贈与の場合、書面に厳格な規定はなく、贈与の意思が明確にされているものであれば認められます。過去の判例から第三者宛の手紙や内容証明郵便であっても、贈与の事実が確認できる内容の記載があれば、書面に該当するのです。一方、メールの文面の場合には、書面と認められるか明確な判例が出ていないため、判断が分かれています。
2.書面によらない贈与は履行前なら撤回が可能
書面によらない贈与は、書面による贈与とは法的拘束力に違いがあります。書面によらない贈与は、契約の履行が終わった部分を除いて、いつでも撤回することが可能です。贈与が無償契約で片務契約であることを考慮して、軽率な行動による贈与のトラブルを防ぐことが目的とされています。書面による贈与契約の撤回には、双方の合意が必要です。
たとえば、自宅に遊びに来た人に壁に飾った絵画を褒められ、「この絵ならあげるよ」と言い、相手が「ありがとうございます。いただきます。」と答えると、書面によらない贈与契約が成立します。しかし、絵画を相手に渡すという債務の履行を終えるまでは、撤回ができるのです。一方、絵を相手方に渡してしまった後は、履行が終わったとみなされますので、贈与を撤回することはできません。不動産の贈与では、建物の引き渡しや登記が履行にあたり、登記が未着手であっても引き渡しをしていたら、履行を終えたとみなされます。
ただし、履行が終わった部分であっても、詐欺があった場合には贈与契約の取消を主張できますし、脅迫があった場合には、贈与契約自体の無効を訴えることが可能です。
書面によらない贈与はトラブルの原因になりやすいですので、贈与の意思がある場合には、書面にまとめておくことが望ましいです。