社葬を行うことが社会通念上相当であると認められる場合には、社葬にかかる費用を、非上場株式の純資産価額の相続税評価で債務控除することが可能です。どういったケースで社葬が「社会通念上相当である」と判断されるのか、また社葬において「通常要すると認められる費用」にはどんな項目が挙げられるのかを解説します。
1.社葬費用は会社の経費として認められるのか?
>>無料会員に入会すると、実務で使えるオリジナル書式をプレゼント!!1-1.「社会通念上相当である」とは?
社葬を行うことが、社会通念上相当であるという判断の根拠となるのは、以下の3点です。
・故人の該当法人における経歴や地位など生前の貢献度
・業務上の死亡など死亡時の事情
・社葬を行う法人の規模
社葬が社会通念上相当であると認められるケースでも、過大な社葬であったり、社葬の範囲を超えた費用を会社が支払ったりすると、会社の経費として認められないこともあります。故人への退職給与や賞与に当たるとされてしまうのです。社葬費用を会社の経費にしたい場合は、次に述べるような「通常要すると認められる費用」であるかどうかを精査する必要があります。
1-2.「通常要すると認められる費用」とは?
社葬費用として「通常要すると認められる費用」であり債務控除が可能となる費用とは、基本的に社葬自体にかかる費用です。例えば、社葬の案内状や広告の費用から始まって、葬儀社に支払う葬儀場の使用料などの諸費用、参列者に社葬当日渡される粗品や礼状、僧侶へのお布施などが対象となります。逆に、社葬費用として「通常要すると認められる費用」の対象とならないのは、仏壇や位牌の費用、戒名を受ける際の費用、墓地や墓石の費用などです。さらに、社葬はさまざまな準備が必要となるため、例えば故人が亡くなってから1カ月後に執り行われたりします。そこで、社葬の前に、家族や親族、友人など故人と個人的な付き合いがあった人々だけで葬儀を行う場合の費用も、「通常要すると認められる費用」にはなりません。
2.社葬費用は非上場株式の純資産価額の計算で負債として計上可能
非上場株式の評価の方式には、「類似業種比準方式」、「純資産価額方式」、「配当還元方式」の3つがあります。「配当還元方式」は特例と言える方式ですので、ここでは説明を省きます。この3つの方式うち純資産価額方式を選択すると、社葬の費用を負債として計上することが可能です。非上場株式は、会社の規模等いくつかの条件により、個々の会社ごとに国税庁が評価方式を定めています。けれども、国税庁が定めた評価方式よりも「純資産価額方式」のほうが有利な場合は、「純資産価額方式」を選択できるケースもあります。例えば、会社の規模の区分は大会社から小会社まで5つに分かれていますが、「中会社の小」の規模の会社では、「類似業種比準価額×60%+純資産価額×40%」の方式もしくは、「純資産価額」方式のどちらを選択できるといった形です。社葬費用を負債として計上したい場合は。「純資産価額方式」が選択可能かどうか、専門家に相談してみましょう。