保安林の相続税評価方法

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保安林の相続税評価方法

山林を所有している人の中には、その山林が保安林に指定されている人もいます。保安林とは、水源の確保や防災といった機能のために保持される山林のことです。農林水産大臣や都道府県知事から指定を受け、開発などに制限がかかる保安林ですが、個人の持ち物です。この保安林に対する相続税の評価はどうなるのでしょうか?

1.保安林とは?

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1-1.保安林とはどんなもの?

保安林とは、水源の確保や土砂災害の防止、防風、水害、潮害、干害の防止、または生活環境の保全・形成などの目的で、立木の伐採や土地利用・形質の変更が制限される森林のことを言います。

日本の国土の約7割が森林で、そのうち国有または公有の森林は約40%、残る約60%は私有林です。ご存じのとおり、森林は生活や環境を守るために大切な役割を果たしており、開発をどんどん進めていくと思わぬ悪影響を招いてしまう恐れがあります。そのため日本では、明治時代から私有林を保全するために伐採制限を実施し、現在は森林法によって守られています。
保安林はこの森林法に基づき、農林水産大臣または都道府県知事が指定するものです。保安林全体のうち、国有林と民有林の割合はほぼ同じです。

個人の所有地でも、申請を行い、保全の必要が認められれば保安林の指定を受けることが可能です。また保安の必要がなくなった場合には保安林指定の解除を行うこともできますが、災害で保安林自体がなくなったり、保安林で公共事業を行うといった場合のことで、個人的な理由や所有権の移転などで解除されることはありません。

1-2.所有する森林が保安林になると?

所有する森林が保安林に指定されると、伐採の制限や植栽の義務、土地の開発への制限がかかります。また、保安林に指定されても、機能が落ちないように適切に整備を行うなど、所有者自身が管理責任を負います。ただし、自治体やボランティアに整備の協力をしてもらうことはできますし、付近に重要な施設があるなど、整備の必要度が高い保安林に関しては、林野庁が保安林整備事業で間伐や枝打ちをしてくれます。

勝手に開発ができない代わりに、所有する森林が保安林に指定されると、固定資産税、不動産取得税、特別土地保有税の免除や、相続税、贈与税の控除などがあります。また、造林補助金の額の加算といった助成を受けることができるようになります。
禁伐や択伐など厳しい区分になっており、財産である立木の利用ができないような場合には、損失の補償も受けられます。

2.保安林の相続税評価方法

保安林に指定された土地の固定資産税は非課税なので、固定資産税の評価額をもとに相続税を算出することはできません。また立木の伐採制限なども考慮しなくてはいけません。そこで具体的に、保安林の評価額の算出方法について見ていきましょう。

2-1.保安林の評価額の算出方法

保安林に指定された土地は、近隣の固定資産税評価額がついている森林の価額をもとに算出します。
保安林には機能保全のため、勝手に伐採や開発などを行ってはならないことになっており、その制限の度合いによって控除割合が決定します。この評価額から立木の制限に応ずる控除割合をかけた金額を控除して、評価額を算出するのです。

立木の制限に応ずる控除割合は、法令によって定められており、一部皆伐なら0.3、択伐なら0.5、単木選伐なら0.7、禁伐なら0.8です。

計算式にするなら「評価額=近隣の山林の固定資産税評価額に比準した価額×(1-立木の制限に応ずる控除割合)」となります。近隣の山林の固定資産税評価額に比準した価額が1,000万円、区分が禁伐の保安林なら「1,000万円×(1-0.8)=200万円」になるので、この保安林の評価額は200万円、ということになります。

【財産評価基本通達50】(保安林等の評価)
森林法(昭和26年法律第249号)その他の法令の規定に基づき土地の利用又は立木の伐採について制限を受けている山林(次項の定めにより評価するものを除く。)の価額は、45((評価の方式))から49((市街地山林の評価))までの定めにより評価した価額(その山林が森林法第25条((指定))の規定により保安林として指定されており、かつ、倍率方式により評価すべきものに該当するときは、その山林の付近にある山林につき45から49までの定めにより評価した価額に比準して評価した価額とする。)から、その価額にその山林の上に存する立木について123((保安林等の立木の評価))に定める割合を乗じて計算した金額を控除した金額によって評価する。(昭41直資3-19・平16課評2-7外・平29課評2-46外改正)

(注) 保安林は、地方税法第348条≪固定資産税の非課税の範囲≫第2項第7号の規定により、固定資産税は非課税とされている。

引用:国税庁「財産評価基本通達50

2-2.立木の評価額

保安林の立木に関しても、伐採などに制限がかかっているため控除が認められています。控除の割合は、保安林の控除割合と同じです。
立木の評価は財産評価基本通達113、117、122のいずれかによって保安林でない場合の評価額を算出し、これに控除割合をかけて評価額を算出します。
たとえば保安林でない場合の評価額が100万円、区分が0.8の禁伐に区分されている保安林なら「100万円×(1-0.8)=20万円」になるので、この保安林の立木の評価額は20万円ということになります。


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