宅地の中にある、宅地として利用できない斜面部分のことをがけ地と呼びます。不動産の用語では「法地(のりち)/法面(のりめん)」という呼び方をすることもあります。宅地内に自然の地形の状態で存在する斜面や、山間部を開発した時に土を切り取って斜面になった切土部分、宅地内の一部に土を盛って斜面になった盛土部分、単なる斜面のみならず敷地内で段々に高低差が生じている箇所なども、一括してがけ地等と総称します。一般的には宅地としてのみならず、庭やその他の用途としても利用価値が下がります。
がけ地等を有する宅地の評価方法
税法上で宅地の敷地内にがけ地等がある場合には、まずそのがけ地等が「がけ地等でない→宅地として利用できる場合」と仮定して、宅地の評価を行い、価額を算出します。
次にまずそのがけ地等の向き(斜面がどの方角に向いているか)を判定します。
更に、がけ地等の部分の面積を算出して、宅地全体の面積からのがけ地等の割合を算出します。
そして、「がけ地等の方位」及び「がけ地等の割合」の2つから、最初に求めた宅地の評価価額に付表8に記載されているがけ地補正率表を掛け算したものを、がけ地等を有する宅地の評価価額とします。
がけ地が特殊な場合の宅地の評価方法1
がけ地が複数方向に存在する場合、例えば北方向と東方向にがけ地等がある場合は、次の方法でがけ地補正率を算出して評価を行います。
{(北方向のがけ地の面積×補正率表に該当するがけ地等の割合の北方向の補正率)+(東方向のがけ地の面積×補正率表に該当するがけ地等の割合の東方向の補正率)}÷(がけ地の総面積)=がけ地補正率。
がけ地が特殊な場合の宅地の評価方法2
がけ地が東西南北以外の方向を向いている場合の評価方法、例えばがけ地が北東方向や西南西方向を向いている場合は、そのがけ地の向いている方角の補正率を平均して使用することも可能です。
例えば北東方向の場合は
{(がけ地等の割合の北方向の補正率)+(がけ地等の割合の東方向の補正率)}÷2=(北東方向のがけ地補正率)とします。
また、西南西方向の場合は
{(がけ地等の割合の南方向の補正率)+(がけ地等の割合の西方向の補正率)×3}÷4=(西南西方向のがけ地等の補正率)とします。
【財産評価総則基本通達第2章20-4】(がけ地等を有する宅地の評価)
がけ地等で通常の用途に供することができないと認められる部分を有する宅地の価額は、その宅地のうちに存するがけ地等ががけ地等でないとした場合の価額に、その宅地の総地積に対するがけ地部分等通常の用途に供することができないと認められる部分の地積の割合に応じて付表8「がけ地補正率表」に定める補正率を乗じて計算した価額によって評価する。(平11課評2-12外追加)
付表8
がけ地補正率表(平3課評2-4外・平11課評2-12外改正)
がけ地の方位
がけ地地積 総地積 南 東 西 北 0.10以上 0.96 0.95 0.94 0.93 0.20 〃 0.92 0.91 0.90 0.88 0.30 〃 0.88 0.87 0.86 0.83 0.40 〃 0.85 0.84 0.82 0.78 0.50 〃 0.82 0.81 0.78 0.73 0.60 〃 0.79 0.77 0.74 0.68 0.70 〃 0.76 0.74 0.70 0.63 0.80 〃 0.73 0.70 0.66 0.58 0.90 〃 0.70 0.65 0.60 0.53 (注) がけ地の方位については、次により判定する。
1 がけ地の方位は、斜面の向きによる。
2 2方位以上のがけ地がある場合は、次の算式により計算した割合をがけ地補正率とする。
3 この表に定められた方位に該当しない「東南斜面」などについては、がけ地の方位の東と南に応ずるがけ地補正率を平均して求めることとして差し支えない。