相続税の対象となる財産は、土地や建物などだけではなく、経済的価値のあるものすべてが該当します。そして、それら相続税の対象となるものの資産価値の評価方法については、財産評価基本通達にて規定されています。そんな相続税の対象となるもののうち、「その他の財産」として区分されている一般的な財産について、代表的なものの評価額の算出方法を解説していきます。
1.有価証券
有価証券については、上場株式(証券取引所で取引を認められた株式)と非上場株式(上場していない株式)、公社債、投資信託に分けられます。
(1)上場株式
基本的には、相続開始日の終値で評価額が決まります。ただし、その日から過去3ヶ月の月ごとの平均株価が相続開始日の終値を下回る場合はその平均株価が評価額となります。
(2)非上場株式
株式を取得した株主が、その会社の経営支配力を持っている同族株主かそうでないかで評価方式が違います。
・同族株主の場合
会社の規模を、総資産と売上高によって大会社、小会社、中会社に分類し、それぞれ以下の方法で株価を評価します。
大会社 …… 類似業種比準方式(類似業種の株価を基にして、1株あたりの配当金額、利益、純資産金額で評価する方式)で算出します。
小会社 …… 純資産価額方式(会社の総資産や負債を基に相続税の評価に洗い替えて評価する方式)で算出します。
中会社 …… 大会社と小会社の評価方法を併用して評価します。
・同族株主でない場合
「1年あたり資本金の1割を配当している会社」を標準として、1株あたりの資本金額から算出します。具体的には以下の計算式に当てはめれば、概算評価額が算出できるでしょう。
1株あたりの資本金額×(配当率÷10%)
(3)公社債
債券の種類によって計算方法は異なりますが、券面額100円を1単位として、債券の最終価格から算出します。例えば、券面額を下回る価格で発行されている割引発行の公社債の場合は、以下の式で評価額が算出できます。
相続開始日の最終価格×(券面額÷100)
(4)投資信託
相続開始日の基準価格で算出します。
2.預貯金(定期預金)
相続開始日の残高で評価されますが、相続開始日までの利息から利息にかかる税金を差し引いた金額を加えたものが評価額となります。
相続開始日の残高+(相続開始日までの利息-利息にかかる税金)
3.ゴルフ会員権
相続開始日の取引額の7割が評価額となります。ただし、預託金がある場合はその金額を加えたものが評価額になります。
4.家具や自動車などの一般動産
基本的には相続開始日の時価で評価額が決まります。なお、時価というのは、相続開始時点で同じ程度のものを入手する(自動車であれば同じ車種、同じ年式の中古車を購入する)ために必要となる金額のことです。もし同じものを相続開始日時点で入手できなければ、相続開始時の新品価格から減価償却相当額を控除した価格で算出されます。
5.書画や骨董品、貴金属など
一般動産と同じく、相続開始日時点の時価で評価額が決まります。ただし、書画や骨董品、貴金属については専門家の鑑定が行われます。また、地金については、相続開始日の取引価格で算出されます。
【参考】
国税庁 タックスアンサー No.4105 相続税がかかる財産
国税庁 タックスアンサー No.4638 取引相場のない株式の評価
国税庁 財産評価基本通達
※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。
なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問い合わせ→記事内容に関するお問い合わせ」よりお問合せ下さい。
但し、記事内容に関するご質問や問い合わせにはお答えできませんので予めご了承下さい。