建設現場、博覧会、一時的興業等のために一時的に設定される借地権は、通常の借地権と異なるために、借地権が設定されている土地の更地価額に借地権割合を乗じて評価額を計算する相続税評価の方法は適切ではありません。では、そのような借地権の価はどうするのでしょうか。以下では、この問題について解説します。
一時使用のための借地権の相続税評価に通常の借地権の評価方法は不適当
借地権の相続税評価は、原則として、借地権が設定されている土地の自用地価額(借地権が設定されていないとした場合の価額)に、国税局長が地域ごとに定める借地割合を乗じて求めます。
しかし、建設現場、博覧会場、一時的な興業等のために、性質上一時的な事業に必要とされる臨時的な設備を所有することを目的とする一時使用の借地権については、一時的な借用権であるという権利の特徴から、上記の一般的な借地権の評価方法を適用することは適当ではありません。
一時使用のための借地権の相続税評価について
一時的な借地権の相続税評価の方法は、雑種地に設定されている借地権の評価方法と同様に評価します。
そして、雑種地に設定されている借地権の相続税評価は、設定されている借地権の性質によって、以下のいずれかの方法で評価することを原則とします。
(1)地上権に準ずる権利として評価することが適当な借地権の場合
当該権利が設定されている雑種地の自用地価額×法定地上権割合又は借地権割合の
いずれか低い割合を乗じた価格
(2)(1)以外の借地権の場合
当該権利が設定されている雑種地の自用地価額×法定地上権割合×1/2
なお、ここで、地上権に準ずる権利として評価することが適当な賃借権には、以下のものが該当します。
・賃借権の登記がされているもの
・設定の対価として権利金や一時金の支払いがあるもの
・堅固な構築物の所有を目的とするもの
なお、法定地上権割合とは、相続税法第23条で規定される割合のことで、その割合は、
対象となる権利の設定期間に応じ、10年以下5%から50年以上の90%の範囲内で定められる率となります。
一時使用のための借地権の相続税評価額の計算例について
例えば、工事事務所用の簡易建物を建てる目的で契約期間を2年間とする一時的使用の借地権を、相続税評価額が1,000万円の雑種地上に設定した場合の、当該借地権(当該借地権は、地上権に準じない借地権とします。)の相続税評価額は、次のようになります。
1,000万円×5%(存続期間10年以下の法定地上権割合)×1/2=25万円
一方、上記の借地権に賃借権の登記が設定されている等の場合には、当該借地権は地上権に準じる借地権となります。その場合には、借地権割合の下限は30%未満ですから、その場合の当該借地権の相続税評価額は以下のように計算されます。
1,000万円×5%(存続期間10年以下の法定地上権割合)=50万円