空中権取引があると、余剰容積率を移転した宅地とその移転を受けた宅地が生じます。それらの宅地に相続が発生すると、その相続財産評価が必要になります。その際、まず最初に、余剰容積率を移転した宅地とその移転を受けた宅地の正確な定義が必要になりますが、この定義は、財産評価基本通達第2章第2節(23-2)によって行われます。
容積率とは
容積率とは、建築物の敷地面積に対する延べ面積の割合のことをいいます。例えば、敷地面積が1,000㎡の敷地に、1階が600㎡、2階が600㎡の建物が立っていたとすると、容積率は、(600㎡+600㎡)/1,000㎡=120%となります。
さて、都市計画法で市街化地域においては、地域ごとに容積率が指定されます。容積率の指定があると、その地域では、その容積率を超える建築物の建築は不可能となります。
例えば、指定容積率を150%とした場合、1,000㎡の敷地に1階が600㎡、2階が600㎡、3階が600㎡の建物を建てようとすると、容積率は180%となり、指定容積率を超えるので建築不可能となります。
余剰容積率の移転とは
最近の都市開発においては、ある建物の敷地に利用されていない容積率(余剰容積率)がある場合、その余剰容積率を他の敷地に移転して、その移転を受けた敷地において指定容積率を超える建物を建築できるようにし、土地の有効利用をはかるという取引がよく用いられます。なお、このような取引を空中権取引とも言います。
例えば、指定容積率150%の地域で、1,000㎡の敷地に1階が600㎡、2階が600㎡の建物の立てているAさん30%の余剰容積率がある一方、隣接地において1,000㎡の敷地に、1階が600㎡、2階が600㎡、3階が600㎡の建物を建てようとしているBさんには、容積率が30%足りません。そこで、AさんがBさんに余剰容積率30%を移転すれば、Bさんも建物を建てることができます。
財産評価基本通達第2章第2節(23-2)について
さて、空中権取引があると、余剰容積率を移転している宅地と、余剰容積率の移転を受けている宅地が生じます。これらの宅地に相続が発生した場合、通常の宅地とは異なる相続財産評価を行います。そのため、まず最初に、これらの宅地を正確に定義しておく必要があります。
この定義は、財産評価基本通達第2章第2節(23-2)により行われます。それによると、
まず、「余剰容積率を移転している宅地」とは、容積率の制限に満たない延べ面積の建築物が存する宅地で、その宅地以外の宅地に容積率を制限を超える延べ面積の建築物を建築することを目的とし、区分地上権、地役権、賃借権等の建築物の建築に関する制限が存する宅地のことをいいます。
上記の例で言えば、隣接地のBさんに余剰容積率を移転したAさんの宅地が当該宅地がこれに該当します。なお、ここでの区分地上権や地役権等の内容は、本来の容積率から移転した余剰容積率を減じた容積率を超える建築物を建築しないものとなります。
一方、「余剰容積率を移転している宅地」とは、余剰容積率を有する宅地に区分地上権、
地役権、賃借権の設定を行う等の方法により建築物の建築に関する制限をすることによって容積率の制限を超える延べ面積の建築物を建築している宅地のことをいいます。上記の例で言えば、Aさんから余剰容積率の移転を受けたBさんの宅地がこれに該当します。