出資とは株式、持ち分などの地位を取得する目的で財産を団体に提供することを指します。
この質疑応答事例の場合、①信用金庫②信用組合③農業組合法人④協業組合の4つの法人に対して、出資を行った人物が居て、その人が死亡し、定款などに基づいて相続が行われ相続人が被相続人に地位を継承する場合、それをどのように財産評価を行うかが記されています。
評価方法
①信用金庫②信用組合の場合、財産評価基本通達195「農業協同組合等の出資の評価」に準じた方法により、その信用金庫、信用組合の払込済出資金額によって評価を行います。
③の農業組合法人の場合、財産評価基本通達196「企業組合等の出資の評価」により、純資産額を基準に出資の持ち分に応じた価額によって評価を行います。
④の協同組合の場合については財産評価基本通達194「持分会社の出資の評価」による方法で評価を行います。ただしこの場合に通達194には「178~193-2までの定めによって評価する」とありますが、この協同組合の評価の場合については通達155の但し書き、通達188~188-5の内容は適用をしません。
理由
財産評価基本通達195「農業協同組合等の出資の評価」は会員の奉仕のために活動をする団体(例:農業協同組合など)への出資の評価に適用されるものであり、195「企業組合等の出資の評価」はそれ自体が企業体として事業を行うことができる団体(例:企業組合、漁業生産組合)への出資に適用されるものです。
協同組合の場合は会社に近似しているとみなされることから通達195、196の定めは適用しないこととなっています。
信用金庫等の出資の評価
【照会要旨】
次に掲げる法人に対する出資者に相続が開始し、定款等の定めに基づき、その相続人が当該出資者の地位を承継することとなったときには、財産評価基本通達のいずれの定めによって評価するのでしょうか。
1 信用金庫の出資
2 信用組合の出資
3 農事組合法人の出資
4 協業組合の出資【回答要旨】
1及び2については、財産評価基本通達195の定めにより、原則として払込済出資金額によって評価します。
3については、財産評価基本通達196の定めにより、純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)を基として、出資の持分に応ずる価額によって評価します。
4については、財産評価基本通達194の定めに準じて評価します。この場合において、財産評価基本通達185のただし書及び同188から188-5までの定めは適用しません。(理由)
財産評価基本通達195の定めは、農業協同組合のように、その組合の行う事業によって、その組合員及び会員のために最大の奉仕をすることを目的とし営利を目的として事業を行わない組合等に対する出資を評価するときに適用します。一方、同196の定めは、企業組合、漁業生産組合等のように、それ自体が1個の企業体として営利を目的として事業を行うことができる組合等に対する出資を評価するときに適用することとしています。なお、協業組合については、組合ではあるが、相互扶助等の組合原則を徹底しているというよりは、会社制度の要素を多く取り込んでおり、その実態は持分会社に近似すると認められることから、同195、196の定めは適用しません。
これらのことから、1及び2については財産評価基本通達195の定めにより、3については同196の定めにより、4については、その実態を考慮し、同194の定めに準じて評価します。
(注) 協業組合の出資を財産評価基本通達194の定めに準じて評価する場合には、各組合員の議決権は原則として平等であり、出資と議決権が結びついていないことから、同185のただし書及び同188から188-5までの定めは適用がないことに留意してください。【関係法令通達】
財産評価基本通達185、194、195、196
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