路線価を用いて相続財産評価を行う場合には、評価対象土地が不整形地だとか無道路地である場合には、その個別的事情を斟酌して評価額の補正を行います。
しかし、評価対象土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて相続財産評価を行う場合には、個別的事情の斟酌による補正は行いません。それは、固定資産税評価の際に、その事情の斟酌がすでに行われているからです。
倍率地域とは
倍率地域とは、土地の相続財産評価を、対象土地の固定資産税評価額に国税局長の定める倍率を乗じる方法(倍率方式)によって定める地域のことを言います。土地の相続財産評価は、路線価が定められている地域では路線価を利用して評価を行いますが(路線価方式)、路線価が定められていない地域では、この倍率方式を利用します。
個別事情の斟酌とは
土地の相続財産評価を路線価を使用して行う場合には、対象土地の個別事情の斟酌を行います。例えば、対象土地が
・形状が不整形な土地
・道路に面していない土地
・がけ地を有した土地
・間口が狭小な土地
などである場合には、対象宅地の路線価に対象宅地の地積を乗じることによって得られる通常の財産評価額に一定の補正を行います。この補正により、対象宅地の個別的事情の斟酌に該当します。
例えば、普通住宅地に所在する路線価が100千円/㎡、地積が200㎡の土地が間口狭小地で、
間口の長さが4m未満であったとします。この場合、この土地の通常の相続財産評価は
100千円/㎡×200㎡で20,000千円ですが、間口が4m未満の普通住宅地区の間口狭小地の補正率は90%ですから、個別的事情を斟酌したこの土地の相続財産評価は、20,000千円×
90%=18,000千円となります。
倍率方式で土地の相続財産評価を行う場合に個別的事情の斟酌は必要か
路線価方式で相続財産評価を行う場合には、対象土地の個別的事情の斟酌を行います。しかし、倍率方式で評価を行う場合には、個別的事情の斟酌は行わないことが原則となっています。
その理由は、倍率方式による相続税財産評価には対象土地の固定資産税評価額に、国税局長の定める一定の倍率を乗じて計算します。ここで、この方式による評価の基準となる固定資産税の評価に際して、すでに個別的事情は斟酌されています。
それにもかかわらず、倍率方式によって計算された相続税評価額に対して、さらに、個別的事情の斟酌を行うと、補正を二重に行うことになり、計算された評価額が不当に低額なものとなる可能性があるからです。
よって、倍率地域での相続税財産評価は、評価対象土地が不整形地であろうが、間口狭小地であろうが、無道路地であろうが、当該土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じた価額が、そのまま相続財産評価額となります。
※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。
なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問い合わせ→記事内容に関するお問い合わせ」よりお問合せ下さい。
但し、記事内容に関するご質問や問い合わせにはお答えできませんので予めご了承下さい。