公社債は国や地方公共団体、企業などが多数の投資家から資金を借り入れるときに発行する有価証券です。国が発行するものは国債、地方公共団体が発行するものは地方債、企業が発行するものは社債というように、さまざまな種類の債券があります。証券会社を通して個人でも入手できるので、相続財産に公社債が含まれるケースも多いことでしょう。
1.割引発行の公社債
公社債のうち、割引発行されるものを割引債といいます。割引債は、券面額よりも低い金額で発行され、償還期日に券面の金額が償還されます。利息は支払われませんが、券面額と発行価額の差額が利息に相当します。たとえば、券面額100円の債券が98円で発行された場合、投資家は98円でこの債券を購入し、償還期日に100円の償還を受けることで、2円の利益を得ることができます(源泉所得税は考慮していません)。
2.割引発行の公社債の評価方法
割引発行の公社債の価額は、原則として課税時期、つまり被相続人が亡くなった日の市場価格をもとに評価します。市場価格がないものは、償還差益のうち課税時期までに経過した部分の額と発行価額の合計によって評価します。財産評価基本通達では、公社債の区分に応じて次のとおり評価方法を定めています。
(1) 金融商品取引所に上場されている割引発行の公社債
・金融商品取引所の公表する課税時期の最終価格。
・課税時期に最終価格がない場合は、課税時期より前で課税時期に最も近い日の最終価格。
・日本証券業協会において売買参考統計値が公表される銘柄としても選定されている場合には、最終価格と平均値のいずれか低いほうの金額。ただし、いずれもない場合は、課税時期より前で課税時期に最も近い日の最終価格または平均値のいずれか低いほうの金額。
(2) 日本証券業協会において売買参考統計値が公表される銘柄として選定された割引発行の公社債(上記(1)の公社債および割引金融債は除く)
・課税時期の平均値。
・課税時期に平均値がない場合は、課税時期より前で課税時期に最も近い日の平均値。
(3) 上記(1)、(2)以外の割引発行の公社債
次の算式によって求められた金額。
発行価額+(券面額-発行価額)×発行日から課税時期までの日数÷発行日から償還期限までの日数
割引発行の公社債を購入するときには償還差益に対する源泉所得税が上乗せされるため、購入価額は発行価額と異なります。評価するときは、購入価額ではなく発行価額で計算することに注意が必要です。
【財産評価基本通達】(公社債)
(割引発行の公社債の評価)
197-3 割引発行の公社債の評価は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げるところによる。(昭47直資3-16追加、昭55直評20外・平11課評2-2外・平12課評2-4外・平15課評2-15外・平20課評2-5外改正)
(1) 金融商品取引所に上場されている割引発行の公社債
その公社債が上場されている金融商品取引所の公表する課税時期の最終価格によって評価する。
(2) 日本証券業協会において売買参考統計値が公表される銘柄として選定された割引発行の公社債(金融商品取引所に上場されている割引発行の公社債及び割引金融債を除く。)
その公社債の課税時期の平均値によって評価する。
(3) (1)又は(2)に掲げる割引発行の公社債以外の割引発行の公社債
その公社債の発行価額に、券面額と発行価額との差額に相当する金額に発行日から償還期限までの日数に対する発行日から課税時期までの日数の割合を乗じて計算した金額を加算した金額によって評価する。
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