占用許可に基づいた土地の占用権は相続税評価の対象となります。では、相続税評価の対象となる占用権に基づいて占用している家屋を賃貸にしている場合には、その相続税評価はどうなるのでしょうか。以下で解説します。
占用許可に基づき所有家屋を賃貸した場合の占用権の評価
相続税評価の基本を定めた財産評価基本通達(以下「評価通達」といいます)第2章第10節(87-7)では、占用の許可に基づき所有する家屋を賃貸した場合の占用権の相続税評価について規定しています。
そして、同規定によると、占用の許可に基づき所有する家屋を賃貸した場合の占用権の相続税評価額は、評価通達の定めに従って評価した占有権の評価額(A)から、(A)に借家権割合及び賃貸割合を乗じた価額を控除した価額となります。
占用権の相続税評価について
評価通達第2章第10節(87-5)では、占用権の相続税評価について規定しています。
同規定によると、占用権の相続税評価額は、占用権が設定されている土地の評価額に、次に掲げる区分に従い、それぞれに掲げる割合を乗じて計算した価額となります。
(1)取引事例のある占用権
売買実例、精通者意見価額等を参考にして、占用権の目的となっている土地の価額に対する割合として国税局長が定める割合
(2)(1)以外の占用権で、地下街又は家屋の所有を目的とする占用権
その占用権が借地権であるとした場合に適用される借地権割合の1/3に相当する割合
(3)(1)及び(2)以外の占用権
その占用権の残存期間に応じてその占用権が地上権であるとした場合に適用される法定地上権割合の1/3に相当する金額
借家権割合について
占用許可に基づき所有家屋を賃貸した場合の占用権の評価で用いる借家権割合は、借家権に係る相続税評価を行う場合に、借家の自用地評価額に対する借家権の評価額の割合として、国税局長が都道府県ごとに定める割合となります。
そして、現在のところ、この借家権割合は全国ほぼ一律に30/100となります。
賃貸割合について
占用許可に基づき所有家屋を賃貸した場合の占用権の評価で用いる賃貸割合は、評価通達第2章第2節(26)貸家建付地の評価の際に使用する賃貸割合を用います。
そして、当該賃貸割合は、評価対象家屋の各独立部分の床面積の合計面積に占める、課税時点において賃貸されている独立部分の床面積の合計面積となります。
例えば、面積が均等な独立部分が10室ある賃貸アパートで、そのうちの7室が課税時点において実際に賃貸されていると、当該アパートの賃貸割合は70%となります。
占用許可により家屋を賃貸している場合の占用権評価の計算例
例えば、取引事例のなく、かつ、家屋の所有を目的とする占用権(占用許可に基づくもの)で、当該権利が設定されている土地の評価額が1,000万円、評価対象地の所在地が所属する地域の借地権割合が90%とすると、当該占用権の相続税評価額は
1,000万円 × 90% × 1/3 = 300万円
となります。
また、当該家屋が賃貸に出されていると仮定し、当該地域の借家権割合が30%、当該家屋の賃貸割合が70%だとします。
この場合の当該占用権の相続税評価額は、
300万円 -(300万円 × 30% × 70%)= 237万円
となります。
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