河川敷の占有許可を得て設置されたゴルフ場の敷地となっている土地を相続によって取得すると、占有権の目的となっている土地の相続税評価が必要になります。そこで、以下では、これについて解説します。
占有権の意義について
まず、最初に、相続税評価における占有権について説明します。一般的に、占有権とは、物を事実上支配する権利のことを言いますが、相続財産評価における占有権は、次の要件に該当するものに限定されます。
(1)河川法第24条の規定に河川区域内の土地の占有の許可に基づく権利で、ゴルフ場
、自動車教習場、運動場その他の工作物(対価を得て他人の利用に供するもの又は専ら特定の者の用に供するものに限る)の設置を目的とするもの
(2)道路法第32条第1項の規定に基づく道路の占有の許可又は都市公園法第6条第
1項の規定による都市公園の占用許可に基づく経済的利益を生じる権利で、駐車
場建物その他の工作物(対価を得て他人の利用に供するもの又は専ら特定の者
の用に供するものに限る)の設置を目的とするもの
(1)の代表的な例は河川敷ゴルフ場、(2)の代表的な例は地下街があげられます。
よって、相続税評価の対象となる占有権は、河川法や道路法等の許可を得て設定された
占有権ということになりますので、私人間の契約に基づいて設定される占有権は、相続
税評価の対象にはなりません。
占有権の目的となっている土地の評価
さて、占有権の目的となっている相続税評価の方法は、相続財産基本通達(87-6)にお
いて規定されています。
それによると、その評価は、まず、占有権が設定されている土地(評価対象地)の近傍
地の土地について、相続財産基本通達に基づいて評価した1㎡当たりの評価額を基本とし
、この価額に、その近傍地と評価対象地の位置関係、形状等の条件差、占有許可の内容を
勘案した修正を加えます。
そして、修正後の1㎡当たりの評価額に、評価対象地の地積を乗じると、占有権が設定
されている評価対象地の相続税評価額が計算されます。
権利の目的となっている土地の相続税評価は、権利の目的となっている土地に権利が設
定されていないものとした場合の評価額から、設定されている権利の評価額を控除した
価額となるのが、一般的です。
しかし、占有権の目的となっている土地の相続税評価は、この一般的な方法は採用せず、
上記の方法によって計算された価額をその相続税評価額とします。
【財産評価総則基本通達第2章87-6】(占用権の目的となっている土地の評価)
占用権の目的となっている土地の価額は、その占用権の目的となっている土地の付近にある土地について、この通達の定めるところにより評価した1平方メートル当たりの価額を基とし、その土地とその占用権の目的となっている土地との位置、形状等の条件差及び占用の許可の内容を勘案した価額に、その占用の許可に係る土地の面積を乗じて計算した金額によって評価する。(平3課評2-4外追加)