取引相場のない株式の価額は、上場会社の株式とは異なり、価格が公になることはありません。そこで、財産評価基本通達では、取引相場のない株式の価額の評価方法を定めています。その方法は、株式を発行する会社を支配しているか否かによって、原則的評価方式と特例的評価方式に分かれます。ここでは、株式発行会社を支配している場合に採用される、原則的評価方式について説明します。
1.原則的評価方式
原則的評価方式では、株式発行会社の規模を、「大会社」、「中会社」、「小会社」に区分します。
取引相場のない株式の発行会社には、上場会社に匹敵する大規模なものから、個人企業と変わらない小規模のものまでさまざまな規模の会社があり、これらを一律の基準で評価することは適切でないとの考えから、規模に応じた評価方法が定められています。
株式発行会社の規模は、その会社の業種、総資産価額、従業員数および1年間の取引金額によって区分します。
2.大会社の株式の価額について
大会社の株式の価額は、類似業種比準価額によって評価します。類似業種比準価額とは、その会社と事業内容が類似した上場企業の株価をもとにして、「配当金額」、「年間の利益金額」、「簿価純資産価額」の比準要素を用いて算定する方法です。具体的な計算方法は割愛します。
ただし、1株あたりの純資産価額によって評価する純資産価額方式で評価することもできます。純資産価額は、評価会社が所有する資産を相続税評価額で処分し、負債を清算し、法人税を支払ったと仮定した場合の残額になります。
両者の大きな違いは、資産の含み益が株式の評価額に反映されるか、されないかです。資産の含み益が大きいときは、類似業種比準方式を採用したほうが納税額は少なくなります。
3.中会社の株式の価額について
中会社の株式の価額については、類似業種比準価額と純資産価額の併用方式によって評価します。計算方法は、類似業種比準価額×L+1株あたりの純資産価格×(1-L)と定められています。
Lは、株式発行会社の業種、総資産価額、従業員数及び1年間の取引金額に応じて定められた値(0.90、0.75、0.60のいずれか)を使用します。中会社の中でも規模が大きくなるほど、Lの値は大きくなります。
大会社の場合と同様に、純資産価額方式によって評価することもできます。
4.小会社の株式の価額について
小会社の株式の評価は、原則として、純資産価額方式で評価します。ただし、中会社と同様の類似業種比準価額と純資産価額の併用方式によることもできます。その場合はLの値は0.50となります。
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