相続は、被相続人が持っていた財産すべてが対象となりますので、被相続人が事業を行っていた場合は、その事業も相続することになります。つまり、「事業」にも相続税が課せられるということですので、その事業も評価する必要があるのです。
事業の評価については、今ある在庫や設備、売掛金などのそれ自体の価値から評価できるものと、「営業上の権利」という総合的に評価しなければ分からないものがあります。
なお、設備の中には「電話加入権」も含まれています。これは、NTTに施設設置負担金を支払って得た権利(固定電話の電話番号)で、携帯電話やIP電話などは含まれません。この権利についても時価で評価されます(現在ではほとんど価値がないものかもしれません)。ただし、特定の番号(7777番や1234番などの容易で人気のある番号や4444番4989番などの人気のない番号)については、時価だけではなく売買実例や精通者意見を参考に評価されます。
売掛金は、先に商品を納品して後払いしてもらう契約上の売上金ですので、その金額がそのまま評価額になります。
相続する財産の評価については、原則として「時価」が適用されます。前者については、比較的容易に算出することができると思われますが、後者はどうやって「時価」を算出すべきでしょうか?
詳しく解説します。
営業上の権利
「営業上の権利」というのは、法律上明確に認められている権利ではありません。一般的に「のれん」と呼ばれるもので、企業が培ってきた社会的な信用や取引先との関係、会社として持っている総合的な技術力や知識、情報などの暗黙知を総合的に表した財産のことです。
個々の企業の状況などがあまりにも深く関与しているため、この権利の時価を算出するのは容易ではありません。そのため、営業上の権利についての評価は、財産評価基本通達165と166に規定されている方法で評価することになります。
(1)営業権の評価
財産評価基本通達165では、営業権の評価を以下の2つの計算式で算出することとされています。
超過利益金額 = 平均利益金額 × 0.5 - 標準企業者報酬額 - 総資産価額 × 0.05
営業権の価額 = 超過利益金額 × 営業権の持続年数に応ずる基準年利率による複利年金減価率
※営業権の持続年数は原則10年
(2)営業権の評価式の詳細
上述している計算式の各項について、詳しく説明します。
・平均利益金額
過去3年間の法人税法上の申告所得に対して、以下の修正を行った金額の平均です。
1.非経常的な損失(事業とは関係ない損失)は控除しない
2.支払利子や社債発行差金の償却費は控除しない
3.役員報酬は控除しない
4.繰越欠損金は控除しない
5.非経常的な利益は控除する
※ただし、3年間の平均が前年度の申告所得を超える場合、前年度の申告所得を平均利益金額とします。
・標準企業者報酬額
算出した平均利益金額によって、以下のように決まっています。
平均利益金額が1億円以下 ……………… 平均利益金額×0.3+1,000万円
平均利益金額が1億円超3億円以下 …… 平均利益金額×0.2+2,000万円
平均利益金額が3億円超5億円以下 …… 平均利益金額×0.1+5,000万円
平均利益金額が5億円超 ………………… 平均利益金額×0.05+7,500万円
・総資産価額
課税時期の前年度末日における総資産の総額です。
・営業権の持続年数に応ずる基準年利率による複利年金減価率
申告所得額は各年度における金額となります。そのため、申告金額のままでは「時価」になりませんので、年度ごとに割引(割増)率をかけたものを合計することになります。
【参考】
国税庁 財産評価基本通達
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