相続税の評価上1つの土地に、区分地上権と借地権、区分地上権と地上権等、複数の権利が設定されている場合があります。そのような1つの土地上に複数の権利が存ずる場合に、その権利の1つを相続により取得する場合には、その権利の相続財産評価が必要になります。よって、以下では、それについて解説します。
土地の上に存する権利が競合する場合とは
土地の上に権利が競合する場合とは、例えば、ある土地に地下鉄等のずい道の所有を目的とする区分地上権が設定されており、さらに、その土地に建物所有を目的とした借地権が
設定されているというような場合です。
さて、そのような土地上の借地権を相続により取得したとします。すると、その借地権の相続財産評価が必要になります。通常の借地権の評価方法は、借地権が設定されている土地の自用地としての評価額に、路線価図で示されている借地権割合を乗じて算出します。
しかし、土地上に権利が競合する場合には、借地権が設定されている土地には、区分地上権も設定されていますから、自用地とした場合の評価額に借地権割合を乗じただけでは、
借地権の正当な評価額は算出できません。
土地の上に存する権利が競合する場合の相続税評価
このような場合、その借地権の相続財産評価は、まず、区分地上権がないとした場合の自用地の評価額に借地権割合を乗じます。次に、それにより算出した価額に、1から区分地上権の割合を控除した数を乗じます。この結果算出された価額が、土地上に区分地上権と借地権が設定されている場合の借地権の評価額となります。
例えば、借地権等が設定されている土地の自用地としての評価額が1,000万円、区分地上権の割合が30%、土地の所在場所の借地権割合が70%であると仮定します。この場合、
この土地に設定されている借地権の相続財産評価は、1,000万円×70%×(1-30%)=
490万円となります。
仮に、この土地に区分地上権が設定されていないとすると、この土地に設定された借地権の評価額は、1,000万円×70%=700万円となります。区分地上権が設定されている土地の借地権は、それが設定されていない土地に設定された借地権に比べてより強い制限がありますが、それが評価額の差に反映されています。
財産評価基本通達と土地の上の権利が競合する場合の借地権等の相続税評価
土地上に存する権利が競合する場合の借地権の評価は、財産評価基本通達の第2章第2節
27-6に規定されています。そこでは、借地権、定期借地権、地上権の3種類の権利について、競合する権利が区分地上権である場合と、区分地上権に準ずる地役権である場合に分けて、その相続財産評価の方法が表示されています。
3つの権利について、2つのケースを想定していますので、評価方法は合計で6種類あることになりますが、そのいずれについても、基本的な考え方は、上記の区分地上権が設定されている土地に設定されている借地権の評価方法と、ほぼ同じです。