土地の上に存する権利が競合する場合の山林の相続税評価とは、例えば、1つの山林に、区分地上権と賃借権の双方の権利が設定されている場合や、同じく、区分地上権に準ずる地役権と地上権が設定されている場合における、当該複数の権利がされている山林の相続税評価のことを言います。以下で、これについて解説します。
~目次~
土地の上に存する権利が競合する場合の山林の相続税評価とは
土地の上に存する権利が競合する場合の山林の相続税評価は、財産評価基本通達の第2章第4節(54-2)で規定されています。それによると、1つの山林に、区分地上権と賃借権、区分地上権に準ずる地役権と賃借権等、複数の権利が設定されている場合の山林の評価は、
以下の方法によります。
それは、当該山林の自用地としての価額から、設定されている権利のそれぞれの価額を控除し、その残額を、複数の権利が設定されている山林の相続税評価額とするというものになります。
土地に存する権利が競合する場合の山林の相続税評価の計算例
例えば、区分地上権と賃借権が設定されている山林の相続税評価を行う場合で、その自用地としての相続税評価額が100万円とし、その土地に設定されている区分地上権の評価額を30万円、同じく賃借権の価額を20万円とすると、当該山林の相続税評価額は、100万円-30万円-20万円=50万円となります。
山林に設定されている区分地上権の評価額について
山林に設定されている区分地上権の評価額は、山林の自用地としての価額に、その区分地上権の設定内容に応じた土地利用制限率を基にした割合(区分地上権割合)を乗じて計算します。なお、区分地上権割合は、トンネル所有を目的として設定した区分地上権の場合には、30/100とすることができるとされています。
山林に設定されている区分地上権に準ずる地役権の評価額について
山林に設定されている区分地上権に準ずる地役権の評価額は、山林の自用地としての価額に、その区分地上権に準ずる地役権の設定内容に応じた土地利用制限率を基とした割合(区分地上権に準ずる地役権の割合)を乗じて計算します。
なお、この割合は、宅地における同権利の割合に準じて決定されるとされていますが、宅地の場合には、その地役権設定により、地役権設定地に家屋の建築が全くできないような
制限を受ける場合の地役権割合は50/100、建築できる家屋の用途に制限を受ける場合には
30/100となります。
よって、山林における区分地上権に準じる地役権の地役権割合は、宅地における同割合に準じたものになります。ちなみに、区分地上権に準じる地役権には、特別高圧架空電線の架設を目的とする地役権等が該当します。
山林に設定されている賃借権の評価額について
山林に設定されている賃借権の評価額は、純山林に設定された賃借権は相続税法第23条に定める方法により、市街地山林のそれはその山林の近隣にある宅地に設定された借地権価額を斟酌する方法により、中間山林のそれは、状況に応じ、純山林又は市街地山林に適用される方法により、決定されます。
なお、相続税法第23条に定める方法とは、賃借権の設定された山林が賃借権が設定されていないものとした場合の評価額に、賃借権の残存期間に応じ、10年以下の5/100から50年以上の90/100までの割合を乗じて評価額を決定する方法です。