近年は証券会社のサービスが充実していて、個人でも手軽に外国の市場で株式取引ができるようになっています。そのため、外国の株式が相続財産に含まれることも珍しくなくなりました。ここでは、外国の証券取引所に上場されている株式の相続税法上の評価方法について説明します。
1.外国の証券取引所に上場されている株式の評価
外国の上場株式は、日本国内の上場株式と同じように評価します。これは、外国の上場株式も、日本国内の上場株式と同様に市場価格が明らかになっているためです。したがって、外国の証券取引所における次のいずれかの価額のうち、最も低いもので評価します。
・ 課税時期(被相続人が亡くなった日または贈与を受けた日)の最終価格(終値)
・ 課税時期の属する月の毎日の最終価格の平均額
・ 課税時期の属する月の前月の毎日の最終価格の平均額
・ 課税時期の属する月の前々月の毎日の最終価格の平均額
課税時期に最終価格がない場合、権利落ちや配当落ちがあった場合、負担付贈与や個人間の売買で取得した場合などについても、日本国内の上場株式に準じた方法で評価します。
2.邦貨への換算
外国の株式は現地の通貨で取引され、価格も現地の通貨で表示されます。相続税法上の評価にあたっては、現地の通貨で表示された価格を邦貨(日本円)に換算する必要があります。
邦貨への換算の方法については、財産評価基本通達に規定があり、原則として、取引金融機関が公表する課税時期における最終の為替相場(対顧客直物電信買相場、TTB)で換算することとされています。取引金融機関の休日など、課税時期に為替相場がない場合は、課税時期より前で最も近い日の最終の為替相場で換算します。
金融機関が公表する為替相場には、対顧客直物電信買相場(TTB)のほか、対顧客直物電信売相場(TTS)、外国通貨買相場(Cash Buying)、外国通貨売相場(Cash Selling)などがあります。売相場と買相場の区別は、金融機関の立場で考えると理解しやすくなります。外貨を邦貨に両替する場合は、顧客が金融機関に外貨を売り渡す、つまり金融機関が顧客から外貨を買い受けると考えます。財産評価にあたっては、外貨を邦貨に換算するので、対顧客直物電信買相場(TTB)を使います。
実務上は、外貨預金の引き出し等で外貨を邦貨に変える場合は対顧客直物電信買相場(TTB)で換算し、外貨の現金を邦貨に両替する場合は外国通貨買相場(Cash Buying)で換算します。しかし、相続税法上の財産評価では一律に対顧客直物電信買相場(TTB)で換算することとされています。
外国の証券取引所に上場されている株式の評価
【照会要旨】
外国の証券取引所に上場されている株式はどのように評価するのでしょうか。【回答要旨】
財産評価基本通達に定める「上場株式」の評価方法に準じて評価します。
(理由)
外国の証券取引所に上場されている株式は、国内における上場株式と同様に課税時期における客観的な交換価値が明らかとなっていますから、財産評価基本通達に定める「上場株式」の評価方法に準じて評価します。
(注) 原則として、課税時期における最終価格によります。ただし、その最終価格が課税時期の属する月以前3か月の最終価格の月平均額のうち最も低い価額を超える場合には、その最も低い価額によることができます。
なお、邦貨換算については、原則として、納税義務者の取引金融機関が公表する課税時期における最終の為替相場(邦貨換算を行う場合の外国為替の売買相場のうち、いわゆる対顧客直物電信買相場又はこれに準ずる相場)によります。【関係法令通達】
財産評価基本通達4-3、5-2、169
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