相続税の課税を免れるため、かつて多くの資産家が資産を海外に移し、相続を開始するという方法をとっていました。しかしそのような課税逃れを防ぐために相続税法が何度か改正され、現在はほとんどの場合において海外にある資産についても相続税の対象となっています。では、それら海外の資産については、資産価値はどう評価され、税額がどう計算されるのでしょうか。詳しく解説していきます。
1.外貨建て資産や海外資産の邦貨換算
海外の資産を相続した場合でも、ほとんどの場合は相続税が課税されます。しかし、相続税についてはあくまでも邦貨(日本円)での課税となるため、外貨建ての資産や国外にある財産については邦貨換算する必要があります。その場合の規定については、財産評価基本通達第4条の3に規定されています。
外貨建ての資産や国外にある財産の邦貨換算については、原則として相続税の納税義務者の取引金融機関が公表している課税時期(取引所休場などで課税時期に公表されていない場合は、課税時期の前で最も近い時期)に顧客が外貨を円へ替える場合の為替レート(対顧客直物電信買相場:TTB)をもとに行われます(債務の場合は顧客が円を外貨へ替える場合の為替レート(対顧客直物電信売相場:TTS)での換算となります)。なお、先物外国為替予約されている資産の場合は、約定された先物相場価格で邦貨換算されます。
2.相続税課税の課税範囲
上記の為替レートで邦貨換算された金額はその他の財産の評価金額と合計され、そこから相続税が計算されることになります。ただ、実際のところは海外の資産が課税対象にならない場合や、海外の財産についての控除なども発生します。
2-1.海外の財産が課税されない場合
被相続人や相続人の状況によっては、相続した資産のうち海外の資産に課税されない場合があります。それは以下のいずれかに該当する場合になります。
・被相続人の住所が海外で、かつ相続人の国籍が日本以外である。
・被相続人の住所が相続開始の5年より前から日本以外であり、かつ相続人の住所が相続開始の5年より前から日本以外である。
2-2.海外の財産についての控除がある場合
海外の財産を相続するにあたって、その財産の所在地の国で相続税相当の課税がある場合があります。その場合でもその海外の財産については相続税が課税されますが、外国で納税した相続税相当の金額については、日本の相続税課税額から控除することができます。
【参考】
国税庁 質疑応答事例 外貨(現金)の評価
国税庁 財産評価基本通達4-3(邦貨換算)