路線価方式で宅地の評価を行う場合、例えばその宅地の中を路線価地域の地区の境に当たるケースがあります。例えば「宅地がT字路の突き当たり部分の両側に存在し、T 字路から見て右側は繁華街地区、左側は普通住宅地区に該当し、それぞれの路線価も異なる。」という場合です。この場合には宅地は2つの地区にまたがっていますが、土地の形状によっては宅地がそれ以上の路線価地域にまたがり、それぞれの路線価も異なるという場合も存在します。
宅地が2以上の地区にまたがる場合の画地調整
国税庁の見解では、宅地が2以上の地区にまたがる場合の画地調整は、原則としてはその宅地がまたがる路線価地域の面積の中から最大の面積の地区を選定して、判定した地区にかかる画地補正率を使用して計算を行います。
ここで用いる画地補正率は、奥行価格補正率、不整形地補正率、間口狭小補正率、奥行長大補正率などの財産評価基本通達の付表で決められている補正率の中で必要なものを利用して計算を行うことになります。
上記の例を挙げれば、まず「路線価価格の加重平均」を求めます。これは、間口が路線に掛かる割合に応じて、路線価の加重平均を算出するもので、
([路線価地域Aの路線価]×[路線価地域A分の間口距離]+[路線価地域Bの路線価]×[路線価地域B 分の間口距離]+…)÷[全体の間口距離]
という数式にて各路線価地域の加重平均を算出します。
次に本章で問題となる「画地調整」を行います。画地調整すなわち「宅地が不整形地である」場合には、[宅地の面積]÷[全体の間口距離]にて想定奥行距離を算出し、【財産評価基本通達第2章第2節付表1:奥行価格補正率】を用いて価格補正率を選んでおきます。
さらに、その不整形地のかげ地割合を算出します。かげ地割合は
([想定整形地の面積-不整形地の面積])÷[想定整形地の面積]
にて算出されます。このかげ地割合を「財産評価基本通達第2章第2節付表5:不整形地補正率表」に当てはめて該当する不整形地補正率を選びます。その上で、
[加重平均の路線価価格]×[奥行価格補正率]×[不整形地補正率]×[土地の面積]
にて、該当の土地の土地評価価額を算出することが可能になります。
他にも「間口狭小補正率や奥行長大補正率」や「加重平均の路線価価格」を必要に応じて使用し、「宅地が2以上の地区にまたがる場合の画地調整」を行います
【財産評価総則基本通達第2章15】(奥行価格補正)
一方のみが路線に接する宅地の価額は、路線価にその宅地の奥行距離に応じて奥行価格補正率を乗じて求めた価額にその宅地の地積を乗じて計算した価額によって評価する。(昭45直資3-13・昭47直資3-16・平3課評2-4外・平11課評2-12外改正)【財産評価総則基本通達第2章第2節付表1】奥行価格補正率表(昭45直資3-13・平3課評2-4外・平18課評2-27外改正)
※本表は平成19年分以降用です。
地区区分
奥行距離
(メートル)ビル街地区 高度商業地区 繁華街地区 普通商業・併用住宅地区 普通住宅地区 中小工場地区 大工場地区 4未満 0.80 0.90 0.90 0.90 0.90 0.85 0.85 4以上6未満 0.92 0.92 0.92 0.92 0.90 0.90 6 〃 8 〃 0.84 0.94 0.95 0.95 0.95 0.93 0.93 8 〃 10 〃 0.88 0.96 0.97 0.97 0.97 0.95 0.95 10 〃 12 〃 0.90 0.98 0.99 0.99 1.00 0.96 0.96 12 〃 14 〃 0.91 0.99 1.00 1.00 0.97 0.97 14 〃 16 〃 0.92 1.00 0.98 0.98 16 〃 20 〃 0.93 0.99 0.99 20 〃 24 〃 0.94 1.00 1.00 24 〃 28 〃 0.95 0.99 28 〃 32 〃 0.96 0.98 0.98 32 〃 36 〃 0.97 0.96 0.98 0.96 36 〃 40 〃 0.98 0.94 0.96 0.94 40 〃 44 〃 0.99 0.92 0.94 0.92 44 〃 48 〃 1.00 0.90 0.92 0.91 48 〃 52 〃 0.99 0.88 0.90 0.90 52 〃 56 〃 0.98 0.87 0.88 0.88 56 〃 60 〃 0.97 0.86 0.87 0.87 60 〃 64 〃 0.96 0.85 0.86 0.86 0.99 64 〃 68 〃 0.95 0.84 0.85 0.85 0.98 68 〃 72 〃 0.94 0.83 0.84 0.84 0.97 72 〃 76 〃 0.93 0.82 0.83 0.83 0.96 76 〃 80 〃 0.92 0.81 0.82 80 〃 84 〃 0.90 0.80 0.81 0.82 0.93 84 〃 88 〃 0.88 0.80 88 〃 92 〃 0.86 0.81 0.90 92 〃 96 〃 0.99 0.84 96 〃 100 〃 0.97 0.82 100 〃 0.95 0.80 0.80 【財産評価総則基本通達第2章第2節付表5】不整形地補正率表(平11課評2-12外追加・平18課評2-27外改正)
※本表は平成19年分以降用です。
地区区分 高度商業地区、繁華街地区、普通商業・併用住宅地区、中小工場地区 普通住宅地区 地積区分 A B C A B C かげ地割合 10%以上 0.99 0.99 1.00 0.98 0.99 0.99 15% 〃 0.98 0.99 0.99 0.96 0.98 0.99 20% 〃 0.97 0.98 0.99 0.94 0.97 0.98 25% 〃 0.96 0.98 0.99 0.92 0.95 0.97 30% 〃 0.94 0.97 0.98 0.90 0.93 0.96 35% 〃 0.92 0.95 0.98 0.88 0.91 0.94 40% 〃 0.90 0.93 0.97 0.85 0.88 0.92 45% 〃 0.87 0.91 0.95 0.82 0.85 0.90 50% 〃 0.84 0.89 0.93 0.79 0.82 0.87 55% 〃 0.80 0.87 0.90 0.75 0.78 0.83 60% 〃 0.76 0.84 0.86 0.70 0.73 0.78 65% 〃 0.70 0.75 0.80 0.60 0.65 0.70 【財産評価総則基本通達第2章第2節付表6】間口狭小補正率表(昭45直資3-13・平3課評2-4外・平18課評2-27外改正)
※本表は平成19年分以降用です。
地区区分
間口距離
(メートル)ビル街地区 高度商業地区 繁華街地区 普通商業・
併用住宅地区普通住宅
地区中小工場地区 大工場地区 4未満 – 0.85 0.90 0.90 0.90 0.80 0.80 4以上6未満 – 0.94 1.00 0.97 0.94 0.85 0.85 6 〃 8 〃 – 0.97 1.00 0.97 0.90 0.90 8 〃 10 〃 0.95 1.00 1.00 0.95 0.95 10 〃 16 〃 0.97 1.00 0.97 16 〃 22 〃 0.98 0.98 22 〃 28 〃 0.99 0.99 28 〃 1.00 1.00 【財産評価総則基本通達第2章第2節付表7】奥行長大補正率表(昭45直資3-13・平3課評2-4外改正)
地区区分
奥行距離 間口距離 ビル街地区 高度商業地区
繁華街地区
普通商業・
併用住宅地区普通住宅地区 中小工場地区 大工場地区 2以上3未満 1.00 1.00 0.98 1.00 1.00 3 〃 4 〃 0.99 0.96 0.99 4 〃 5 〃 0.98 0.94 0.98 5 〃 6 〃 0.96 0.92 0.96 6 〃 7 〃 0.94 0.90 0.94 7 〃 8 〃 0.92 0.92 8 〃 0.90 0.90
※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。
なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問い合わせ→記事内容に関するお問い合わせ」よりお問合せ下さい。
但し、記事内容に関するご質問や問い合わせにはお答えできませんので予めご了承下さい。