当初から定められた契約期間で借地関係が終了し、契約の更新がない借地権のことを定期借地権といいます。この定期借地権を相続によって取得した場合には、定期借地権の相続税評価が必要になります。そこで、以下では、その評価について解説します。
定期借地権の相続税評価額の計算式について
定期借地権の相続税評価の方法は、相続財産評価基本通達の27-2及び27-3で規定されています。
それによると、定期借地権の相続税評価額は、原則として、課税時期において借地権者に帰属する経済的利益及びその存続期間を基にして評定した価額によって、評価します。
具体的には、以下の計算式によって算定される評価額となります。
(A)= 定期借地権等の設定時における借地権者に帰属する経済的利益の総額
(B)= 定期借地権等の設定時におけるその宅地の通常の取引価額
(C)= 課税時期におけるその定期借地等の残存期間年数に応じる基準年利率による複利年金原価率
(D)= 定期借地権等の設定期間年数に応じる基準年利率による複利年金原価率
(E)= 定期借地権が設定されている宅地の課税時期における自用地としての価額
定期借地権の相続税評価額=(E)×(A)/(B)×(C)/(D)
定期借地権等の設定時における借地権者に帰属する経済的利益の総額とは
上記計算式(A)における定期借地権等の設定時における借地権者に帰属する経済的利益の総額は、以下の(1)~(3)の価額の合計額となります。
(1)定期借地権の設定に際し、借地権者が借地権設定者に対し、権利金、協力金、礼金等の名目で支払う金銭等のうち、借地権契約終了時に返還しないとされる金銭又は財産の供与がある場合、課税時期に支払われるべき金銭又は財産の価額に相当する金額
(2)定期借地権の設定に際し、借地権者から借地権設定者に対して、保証金、敷金等の名称の如何にかかわらず、借地契約の終了時に返還を要するとされる金銭等(保証金等)を預託した場合に、その保証金等に基準年利率未満の約定利率による利息の支払いがあるとき又は無利息のときは、以下の計算式で計算した金額
(F)= 保証金等に相当する金額
(G)= 定期借地権等の設定期間年数に応じる基準年利率による複利現価率
(H)= 約定利率
(I)= 定期借地権等の設定期間年数に応じる基準年利率による複利年金現価率
(J)= 定期借地権等の設定時における借地権者に帰属する経済的利益となる価額
= (F)-{(F)×(G)}- {(F)×(H)×(I)}
(3)差額地代がある場合には、その差額地代の金額に、定期借地権等の設定期間年数に応じる基準年利率による複利年金原価率を乗じた金額
なお、差額地代とは、同種同等の他の定期借地権等における地代の額と、課税対象の定
期借地権等の地代との間に差額がある場合に、その差額について、上記(1)及び(2)
における経済的利益を考慮した後の金額が該当します。
年金複利現価率及び基準利率とは
年金複利原価率とは、毎年1円の年金を一定期間受け取るとした場合に、その受給権の
価額を現在の価額に直すとすると、どれくらいの価額になるかという率のことです。
例えば、毎年1年の年金を50年間受けるとすると、受取総額は50円となります。
この50年間に毎年1円ずつ50円を受け取る権利を現在の価値に直す場合には、年金の
金額に上記の年金複利原価率を乗じて計算します。
仮に、基準年利率を0.5%とすると、この率は44.143となるので、1円×44.143=約44円
となり、50年間毎年1円ずつ受け取る権利の現在の価値は約44円となります。
一方、基準利率は、財産評価基本通達において、相続税評価において適用される年利率
して定められる率のことで、国税庁のホームページで公開されており、平成27年12月
分だと1年~2年の短期が0.01%、3年~6年の中期が0.05%、7年以上の長期が0.5%
となります。
定期借地権の相続税評価を行う場合には、基準利率と、定期借地権の設定期間年数及び
定期借地権の残存年数等から、それに対応した年金複利現価率を用います。