生産緑地内の市民農園として貸し付けられている土地を相続によって取得した場合には、当該土地の相続税評価が必要になります。では、その評価に関して、何か利用できる特例あるのでしょうか。以下で解説します。
~目次~
生産緑地内にある市民農園の底地の相続税評価に係る質問について
生産緑地内の農地を、特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律によって地方公共団体に市民農園として貸付けている場合で、当該農地を相続によって取得した場合、その相続税評価にはどうなるのという質問が、質問者から国税庁に対してなされました。
なお、生産緑地とは、都市における良好な生活環境の保全や都市災害の防止、あるいは、将来の公共施設の整備に対する土地確保の目的から、都市計画法上の市街化区域内の農地を対象に指定される地区のことをいい、生産緑地法によって指定されます。
一方、特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律とは、地方公共団体や農業協同組合等が市民菜園として貸付けることを目的として、農地に地上権その他使用収益をする権利を設定する場合の農地法等の特例を定めるものです。
生産緑地内にある市民農園の底地の相続税評価に関する質問に対する回答について
この質問に対して、国税庁では、以下のように回答しています。
まず、当該市民菜園の底地は、農地法上の農地には該当しません。
その結果、当該地の相続税評価においては、農地であることの斟酌は適用されず、生産緑地としての利用制限に係る斟酌と、賃貸借契約の期間制限に係る斟酌の2つが考慮できます。
1つめの、生産緑地としての利用制限に係る斟酌によって当該土地の評価額から控除できる価額は、当該地が生産緑地でないものとした場合の評価額に、相続開始時期(課税時期)から市町村長に当該地の買取申し出が可能となる日までの期間に応じ、10%~35%を乗じた金額となります。
2つめの、賃貸借契約の期間制限に係る斟酌は、財産評価基本通達87(賃借権の評価)(2)に準じるものと規定されています。
これに従えば、当該期間制限に係る斟酌によって当該土地の評価から控除できる価額は、当該地の自用地として評価額に、相続税法第23条で定める法定地上権割合に2分の1を乗じた金額となります。
そして、この質問及び回答が、国税庁の質疑応答「市民農園として貸し付けている農地の評価」になります。
生産緑地内にある市民農園の底地に関する相続税評価の特例について
生産緑地内の市民菜園として貸付けられている土地の一般的な相続税評価は、先に述べたとおりですが、上記の質疑応答によると、さらに、次の要件を満たす場合には、その相続税評価に下記の特例が適用されます。
(1)地方自治体の定める条例に基づいて設置された市民農園の底地であること
(2)土地の賃貸借契約に以下の事項が定められていること
1. 貸付期間が20年以上であること
2. 正当な理由がない限り貸付けを更新すること
3. 農地所有者は貸付けの期間中に中途において正当な事由がない限り土地の返還を求めることができないこと
(3)相続税及び贈与税の課税時期後に引き続き市民農園として貸付けられること
(4)相続税又は贈与税の申告書に一定の書面を添付すること
上記条件を満たしている場合には、評価対象地が市民農園として貸付けられていないとした場合の相続税評価額に20%(残存期間20年以下の法定地上権割合)を乗じた金額が、斟酌できる価額となります。
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