※2018年1月以降発生の相続について、「広大地評価」は適用できません。代わりに「地積規模の大きな宅地の評価」が新設されています。※
都市計画法上の市街地区域にある農地(市街化農地)や、市街化の傾向が著しい区域内にある農地で政令で定める農地(市街化周辺農地)に該当し、市街化農地については原則として1,000㎡以上、市街化周辺農地については原則3,000㎡以上の広大地については、
相続税財産評価上、特例が設けられています。以下では、この特例について解説します。
通常の市街地農地等の相続税財産評価について
広大な市街地農地の財産評価の解説をする前に、通常の市街地農地と市街地周辺農地の相続税財産評価について説明しておきます。通常の市街地農地等の評価方法を知っておくことは、広大な市街地農地の財産評価を理解するために不可欠です。
ここでいう広大な農地とは、土地の開発を行う場合に、都市計画法上の開発許可が必要になる規模以上の地積を有するものをいいます。土地の開発する場合に開発許可が必要になる地積は、市街化区域内では原則1,000㎡以上、市街化区域と市街化調整区域の区分がない区域(未線引き区域)では、3,000㎡以上となっています。
市街地農地の相続税評価方法
市街地農地の評価方法は、農地が宅地であるとした場合の1㎡あたりの価額から、その農地を宅地に転用する場合において通常必要と認められる1㎡あたりの造成費に相当する額として、地域ごとに国税長官が定めた価額を控除した金額に、その農地の地積を乗じた金額を相続税財産評価とします。
例えば、東京都A市B町1丁目1番○○道路沿いの路線価(宅地の1㎡あたりの相続税評価額)が285千円/㎡だったとします。東京都で、平坦な500㎡の農地を宅地に造成する場合の1㎡当たり整地費用として国税庁が定める金額は、合計で57,400円となります。内訳は以下のとおりです。
・整地費 600円
・伐採費等 600円
・地盤改良費 1,300円
・土盛費 4,400円
・土止費 50,500円
よって、この位置にある市街地農地の相続税評価額は500㎡×(285千円-57.4千円)=113,800千円となります。ちなみに、この土地が宅地である場合の相続税評価額は142,500千円です。なお、評価対象地が、不整形地、無道路地、がけ地、間口狭小地である場合には、上記で計算した価額に、それぞれの事情に応じた補正率を乗じた価額を、評価額とします。
市街地周辺農地の相続税評価方法
市街化周辺農地の相続税財産評価は、評価対象農地が市街地農地であるとした場合の評価額に80/100を乗じた価額となります。つまり、農地のその他の条件が同じであれば、市街地周辺農地は、市街地農地の80%の評価額となります。
広大な市街地農地の評価について
さて、市街化農地については原則1,000㎡以上、市街化周辺農地については原則3,000㎡以上の農地を評価する場合には、まず、通常の市街化農地等の相続税財産評価の方法で評価した価額を計算します。そして、その価額に、以下の広大地補正率を乗じます。
広大地補正率は、0.6から0.05に広大地の地積を1,000で割った数値を乗じた数値を差し引いた率となります。例えば、広大地の地積が2,000㎡であった場合には、広大地補正率は、0.6-0.05×2,000/1,000=0.5となります。
例えば、路線価285千円/㎡、整地費用が57,400円/㎡の区域に所在する面積1,000㎡の市街地農地の相続税財産評価額は、広大地補正がかかるので1,000㎡×(285千円-57.4千円)×{0.6-(0.05×1,000/1,000)}=125,180千円となります。
広大地補正を行った場合の注意点について
なお、通常の土地の財産評価の場合には、通常の土地の評価額に、評価対象の土地の条件により決定される以下の補正率を乗じた価額を財産評価額とします。
・奥行価格補正
・側方路線影響補正
・二方路線影響補正
・三方又は四方路線影響補正
・不整形地補正
・無道路地補正
・間口狭小地補正
・がけ地補正
・容積率の異なる2以上の地域に渡る場合の補正
しかし、広大地補正を行った場合には、仮に評価対象農地に上記補正が必要になる特殊な事情があっても、上記に該当する補正は行いません。広大地補正率が、唯一、通常の農地の評価額に乗じられる修正率となります。